東北楽天ゴールデンイーグルスの田中将大投手が9月22日、国内フリーエージェント権を取得した。来季終了までの2年契約を結んでいるものの、「今オフ、契約途中でも米再挑戦を念頭に入れた交渉が可能」なことは、各紙既報通り。しかし、もし本当に再挑戦となった場合、NPBは頭を抱えることになりそうだ。
「田中が取得したのは、国内FA権です。今オフ再挑戦となれば、現行ルールではポスティングシステムを利用することになります」(球界関係者)
楽天との信頼関係を考えると、田中自身が「もう一度」といえば、快く送り出すだろう。
ポスティングシステムは“理解”がなければ、前に進まない。一見、何の問題もなさそうだが、そうではないのだ。
「田中がポスティングにかけられた場合、一選手が2度、同じ制度を活用することになります。ルール上は2度目の利用を禁止していないので問題ありません。でも正直に言うと、この制度を作ったとき、2度目を想定していなかったのです」(同前)
1回目のポスティングで田中がヤンキース入りした2013年、同制度は米球界の強い要望もあって、導入された当初とはルールが変わっていた。最高落札金を投じた米球団が独占交渉権を得る方法を改め、譲渡金額は日本の所属球団側が決めるが、その上限は2000万ドル(約20億円)と定められた。上限額が決められていなかったころに移籍した松坂大輔の西武、ダルビッシュ有の日本ハムは大金を得たが、それと比べれば楽天は決して大儲けはしていない。
「9月20日のソフトバンク戦では復帰後ワーストとなる5失点でKOされています。今の田中の成績では米球界再挑戦は考えにくい」(スポーツ紙記者)
とはいえ、田中のネームバリューとヤンキースのローテーションを7年間も守り抜いた実績は米スカウトも認めている。
「今オフの米FA市場は『内野手が多く、好投手は多くない』と予想されています。田中が再挑戦する余地はありそうですが、MLBは米選手会との労使協定の協議を控えており、交渉に十分な時間をかけられないかも」(米国人ライター)
1人の選手がポスティングシステムを2度使うことになるのか。上限額が定められているので楽天がボロ儲けすることは決してないが、田中の動向次第では、NPBはルール改訂を検討することになりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)