コロナ禍の巣ごもり需要によって、ペットを飼い始める人が増えた。ペットフード協会によれば、2020年の新規の飼育頭数は犬が46.2万頭(前年比14%増)、猫が48.3万頭(同16%増)となっている。
一般的にペット業界では、まずブリーダーのもとで子犬や子猫などが繁殖され、その後オークションで取引された後、ペットショップを経て飼い主へと渡る。障害を持って生まれたり、売れ残ったり、捨てられた動物は、愛護団体やボランティアで引き取られ、譲渡会などを通じて飼い主を見つける。
しかし、最後まで飼い主を見つけられなかった動物たちの中には、保健所へと送られて殺処分されたり、「引き取り屋」と呼ばれる業者によって闇処分されたりするケースもあるのだ。
ブリーダーによれば、海外から日本は〝動物愛護の三流国〟と呼ばれており、生体販売についても問題視されてきたという。ペット事情に詳しいライターが言う。
「米カリフォルニア州や豪ビクトリア州などでは、犬や猫の生体販売が禁止されています。動物愛護先進国といわれるドイツでは業界団体が自主規制しており、フランスでも生体販売は減りつつあります。一方で、少し前までの日本では、狭いケージの中に何匹もの動物たちが入れられている光景は珍しくありませんでしたが、それを見て衝撃を受ける海外の人は多かったようです。海外のブリーダー仲間が来日した際も、『こんな劣悪な環境で売られている動物たちが可哀想……』と泣いていました。また、欧米ではペットを飼いたければ、保護施設やシェルターに行く文化が広まりつつあります。しかし、日本で保護動物の譲渡会は、目立たない場所でひっそりと開催されることも多いため、あまり世の中に浸透していません。さらに、里親になるためには、収入や家族構成などの条件が厳しく敷居が高いのです」
そのため、消費者は手軽なペットショップを利用する。
「需要がある限りペットショップは生体販売を続け、誰でも飼いやすいがゆえに、無責任な飼い主に渡った動物が捨てられる。一部の悪徳ブリーダーによる過剰繁殖も止まらず、売れ残った動物は処分されてしまう。生体販売はこの悪循環が生まれる一因になっているといえます。日本の生体販売市場は1000億円にも上るといわれており、こうしたビジネス構造の恩恵を受けているペット業界は抜本的な規制強化に消極的。近年、ようやく日本でも動物愛護に対する関心の高まりを受けて、動物を扱う業者に対し、収容するケージのサイズや従業員1人当たりの飼育頭数など、具体的な数値規制が設けられるようになりました。しかし、今後も生体販売というビジネスモデルがなくなることはないでしょう」(同前)
値付けされた動物たちは、いまこの瞬間も主人との運命の出会いを待ちわびているに違いない。
(橋爪けいすけ)