7月14日、厚生労働省の諮問機関である「中央最低賃金審議会」の小委員会は、2021年度の都道府県別の最低賃金を一律で28円引き上げ、全国平均で現在の時給902円から930円へとする方針をまとめた。引き上げ幅は過去最高となったが、期待の声よりも《むしろ雇用が減るのでは?》といった指摘が見られる。
「政府は経済再生のため最低賃金1000円を目標にしており、19年度まで4年連続で3%以上引き上げられ、今年3月22日に開かれた経済財政諮問会議では菅首相も『最低賃金をより早期に全国平均1000円とすることを目指す』と表明していました。今回の審議会では経営者側が雇用の維持が難しくなるとして現状維持を要求していましたが、結局は政府の意向を汲むかたちで大幅な引き上げとなったのです」(経済ジャーナリスト)
このまま引き上げが実施されれば、最低賃金が最も低い秋田、鳥取、島根、高知、佐賀、大分、沖縄の7県での792円も820円となるが、ネット上では《社会保険料や厚生年金、所得税の料率を引き下げる方が先じゃないか?》《上げればいいものでもない。結局消費税が増税されれば一緒》《店の売上が上がらないのに賃金ばかり上げてどうするつもりだよ》など否定的な意見も多く、《従業員の時給だけ上がるなら、むしろ雇用が減ったり勤務時間が減らされそう》と懸念の声も出ている。
「新型コロナウイルスの感染拡大によって飲食店や観光業を中心に売上が落ちているところも多く、東京五輪も無観客での開催が決まり、当初期待していたインバウンド需要もなくなったタイミングで従業員の最低賃金が上がるという状況は、経営者にとっては非常に厳しいことは間違いないでしょう。一方で本来、最低賃金が上がるのは雇用される側からすれば喜ばしいことなのですが、ネット上で指摘されているように、売上が上がらないのに賃金だけ上がれば、雇用する側は人数を減らしたり、勤務時間を減らさなければなりません。結局、雇う側と雇われる側、双方の首を絞める可能性も十分あると思います」(経済ジャーナリスト)
聞こえがいいだけの政策か。
(小林洋三)