最低賃金911円から42円アップも…「不当に低い」茨城県知事が不満のワケ

 8月18日に地域別の引き上げ額が出揃って、全国平均43円アップで過去最高の引き上げ額となった日本の最低賃金。地域によってバラつきはあるものの、トータルで引き上げとなったから“めでたしめでたし”のはずなのだが、そのバラつきの中でも面白くなかったのが茨城県の大井川和彦知事だ。その茨城県では、全国平均とほぼ同じ42円アップの953円で、4.61%増なのだが、「不当に低い」とオカンムリなのだ。

「大井川知事が24日の定例会見でこのことを持ち出し、最低賃金が決められたプロセスに疑問を呈したのです。最低賃金は、国の中央審議会で用いられた都道府県の総合経済指数に従い、県の労働局が専門家などによる審議会から上がってきた答申に基づいて決定するというプロセスを経たものです。ところがこの時に用いられた経済実態を示す総合指数だと、茨城県は全国9位。それなら最低賃金のランキングで9位の静岡県と同じ984円になるはずなのに、実際に決定された最低賃金はこれより31円低いもの。おかしいじゃないか、というわけです」(経済ジャーナリスト)

 さて、この手の都道府県ランキングでは、「魅力度ランキング」で長いこと茨城県と栃木県がビリケツ争いを続けて、なにかと世間を賑わせていたのは記憶に新しい。そして両県が魅力度を高める中、今度は同じ北関東の群馬県が21年に44位になると、群馬県の山本一太知事がこれに激怒し、算定している調査会社に対し「法的措置も検討」とまで不満を述べたことも。

 そして今回は、ランキング化して順位を付けるようなものではないので、もちろん大井川知事は他県のことは言わないものの、やはり不満がないわけではなさそうなのだ。

 というのも、ではこれら他県の最低賃金を見ると、栃木県は41円アップ(4.49%)の954円で、アップ率では茨城県より低いものの、結果は1円上回っているからだ。では参考となった総合指数はどうかと言えば、茨城の9位より5つも低い14位。数字だけ見れば、茨城からすると「不当に低い」ように見えるのは致し方ない。

「特に茨城県と栃木県は海あり県と内陸の県という大きな違いがあるものの、北関東で左右に並列して、首都圏からの地理的距離はほぼ同等。それが県境を越えると最低賃金が違ってきてしまうわけですから、特に茨城県は大企業の誘致に取り組んでいる背景があるので、雇用を生んでも賃金が安いのでは貧乏暇なしになってしまう。非常に聞こえが悪くなるという不都合があるのでしょう」(前出・ジャーナリスト)

 そこで県は審議会の委員長宛に公開質問状を送るという、前代未聞の行動に出た。魅力度ランキングの遺恨はやはり深そうだ。

(猫間滋)

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