「コロナ雇調金」を不正受給するブラック企業の狡猾な手口

 新型コロナウイルス感染症に係る「雇用調整助成金(雇調金)」という制度をご存知だろうか。先行きの見えないコロナ不況によって業績が悪化し、やむを得ず従業員を休業させた事業主に支払われる公的支援だ。現状では、原則1人当たりの上限額は1日1万3500円だが、業績が大幅に悪化した企業は最大1万5000円が支給される。

 7月11日時点で申請件数は累計404万件、支給決定額は4兆円に迫る勢いだ。こうした現状を受けて、政府は雇調金の特例措置を9月末まで延長すると発表した。

 その一方で、雇調金の不正受給も相次いでいる。4月6日、田村憲久厚生労働相は全国で不正受給は44件、計2億7000万円に上ると会見で述べた。

 不正受給の実態を社労士が明かす。

「雇調金の制度は昔から存在し、以前までは計画届(従業員の詳細な休業カレンダー)を提出しなければなりませんでしたが、コロナ特例下では簡素化されたため、不正受給が起こりやすい状況といえます。不正受給の手口は、従業員を働かせているにもかかわらず休業扱いにしたり、休日を減らして休業日数を水増ししたり、別会社に出向させて助成金だけ受け取ったりなど様々。しかし、こうした助成金制度は、危機が回避されるまでは緩い審査で多額の公金が支払われますが、後々に厳しい審査が待っているもの。支給後に不正が発覚した場合は、助成金を返還せねばならず、事業主の名前が公表され、懲役1年6カ月の判決を受けたケースも。その多くは労働局の調査や従業員による告発によって発覚します。コロナ禍のいま不正受給に手を染める企業は少なくありませんが、十中八九バレると思ったほうがいいでしょう」

 鈴木祐介さん(仮名、32歳)が働くIT系企業でも、雇調金の不正受給が行われているという。

「会社は雇調金を申請していますが、社員にテレワークを強いながら、休業しているように見せかけるといった細工を講じています。社員にはバレバレなのですが、社長いわく『発注元のクライアントが稼働している以上、下請けであるウチが休むわけにもいかない』『会社が潰れたら困るのはお前たちだろ』などと意味不明な言い訳をして開き直っている。コンプライアンスのかけらもなく情けない限りですが、コロナ禍で傷んでいる業界なら余計に、ウチみたいな会社は多いのでは?」

 不正に助成金を受給した企業は、コロナ終息後に思わぬしっぺ返しを食らうに違いない。

(橋爪けいすけ)

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