4期目再選の静岡・川勝知事が「リニア工事」を絶対認めないワケとは?

 先日行われた静岡県知事選で元国土交通副大臣の岩井茂樹氏を破り、4選を果たした川勝平太知事。選挙の争点のひとつとなったのがJR東海が進めているリニア新幹線だが、知事はかねてより「大井川の水量が減る可能性がある」との懸念から工事の反対を表明。そのため、予定ルート上にある静岡県内の8.9キロの区間は未着工のままとなっている。

 これにより27年に予定されていた品川~名古屋間の開業は極めて難しい状況となり、知事に対する批判の声も少なくない。ただし、県政を担う立場として受け入れることができない理由もあるという。

「一部では『静岡空港最寄りの新幹線新駅やリニアの駅の建設を断られた腹いせだ!』との声もありますが、そんなレベルの話じゃない。静岡県にとって大井川は生命線とも言える水源で、この水量が減ると生活用水や農業用水に大きな支障を与える可能性があるからです。心配のしすぎと思われるかもしれませんが、トンネル工事によって周辺河川の水量が減ったケースは実際に起きています」

 そう説明するのは鉄道ジャーナリスト。長崎県諫早市の井樋ノ尾(いびのお)地区では、18年に地域を流れる河川が枯渇。地域の農家が田植えができなくなるほどの深刻な事態に陥った。

 その原因となったのが、近くを走る九州新幹線・長崎ルート開通のために進められていた久山トンネルの掘削工事。工事に当たっていた国土交通省所轄の独立行政法人、鉄道建設・運輸施設整備支援機構も、これを正式に認めているのだ。

「川勝知事はこの問題が起きる以前から反対していますが、彼の懸念の裏付けとなってしまい、ただゴネていただけではないことを証明しました。諫早の場合は新たに井戸を掘り、それを代替用水にできましたが大井川だと規模が大きすぎてそれも困難です」(同)

 もちろん、トンネルを掘削しても水量に影響のない可能性はあるが、諫早のケースは何十年も昔のことではなく、ほんの3年前の話。最新技術をもってしても回避することができなかったため、国からいくら圧力をかけられようとも簡単に認めるわけにはいかない、というわけだ。

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