リビアで世界初使用「殺人AI兵器」の全貌!国連報告書で明らかに

 SF映画の世界がいよいよ現実味を帯びてきた——。 昨年春、内戦下のリビアで人工知能(AI)を持つ「殺人ロボット兵器」が、実戦で使われていたことが22日、国連安全保障理事会のリビア専門家パネルの報告により明らかになった。

 報告書によれば、殺人AI兵器はトルコにある軍事企業「STM」が製造する小型無人機「Kargu-2」を改造し爆発物を搭載させたもので、これで兵士らを自動的に追尾、攻撃したとされる。

 国際問題に詳しい軍事ジャーナリストが語る。

「今回提出された専門家パネルの報告書には、リビア北部で墜落した無人機の残骸写真が掲載されていたものの、具体的にいつ、どこで攻撃があったのか、また、攻撃によりどの程度の被害が出たのかなど詳細は一切わかっていません。ただ、『自律型致死兵器システム』と呼ばれる殺人ロボット兵器の実戦投入が確認されたのは世界初のこと。というのも、人間の関与なしに自律的に攻撃目標を設定でき、致死性を有する『自律型致死兵器システム』の導入については、定義が定まっていないこともあって、人道と安全保障の観点から各国で認識の差があり、国際法でその使用が認められていません。改造したとはいえ、それをリビアが使ったとなると、倫理面から国際的な批判が起こることは必至。今回のことをきっかけに、ロボットの兵器化に対する反対運動が高まる可能性も高いと思いますね」

「Kargu」とはトルコ語で、山頂にある展望塔を意味するが、STM社が生産するKargu-2は小型ポータブル回転翼神風ドローンで、最高速度が約90マイル(144キロ)。航続時間は30分で、通常は約10キロ離れた場所からオペレーターが直接制御するシステムだとされる。

 リビアで使われたKargu-2は、どんな改造が施されているのかは不明だが、前出のジャーナリストいわく、

「Kargu-2は心臓部に埋め込まれたリアルタイム画像処理機能と機械学習アルゴリズムを通じ、移動ターゲットを認識。顔認識システムで特定の個人を探しだし、追跡して攻撃することができる。同社ではKargu 2 がドローン群で動作する動画をYouTubeチャンネルにアップしていますが、これらすべてに弾頭が搭載され、狙われたら逃れようがない。一部情報では、2020年のナゴルノ・カラバフ戦争でも、アゼルバイジャンによって、Kargu 2 の改造型が使用されたという話もありますが、キラーロボットの出現で、映画の世界が、より現実的になりつつあることを実感させられますね」

 かつては、パキスタンで米国の攻撃型ドローン(無人機)による民間人誤爆があり、それがきっかけとなり、国連人権理事会では、殺人ロボット兵器開発のモラトリアムを求める特別報告が提出されたこともある。

「その前後から非政府組織(NGO)によるロボットの兵器化に対する反対活動も活発になり、NGOは『殺人ロボット禁止キャンペーン』を展開、無人兵器システム開発の即時禁止などの法的枠組み作りを訴えました。ただ、中国、ロシア、米国などのAI先進国との間で意見が対立し、なかなか議論が前へ進んでいないというのが現状。日本でも国際法、国内法で使用が認められていない装備品の研究開発は行わない、としていますが、今後議論が進むにつれ解釈が変わっていく可能性はあります。AI兵器により、実行者が的確かつ効率的に相手を殺傷出来るようになることは間違いありませんが、高度化した兵器が人間の倫理観に相反することは紛れもない事実。平和のためにも、AI兵器が使われないで済む世の中になることを望むばかりですね」(前出のジャーナリスト)

 平和が叫ばれる中、一方では殺人AI兵器が開発されるといった矛盾。ともあれ、数百台、数千台の殺人ロボットが世に放たれる……そんな未来は想像したくない。

(灯倫太郎)

*写真はイメージです

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