「SAGA」と書いて佐賀。地元出身のお笑い芸人が自虐ネタとしてそのローカル性を歌えば笑いにもなるが、こと現実世界で軽んじられると当然、住民の反発を招くもの。ということで、事実、佐賀県民が怒っている。それも、県知事・市長までもが怒っている。
JR九州の青柳俊彦社長は1月28日に佐賀県に陳謝、自らの発言を訂正する会見を行った。問題となっているのは、九州新幹線西九州(長崎)ルートだ。
九州新幹線は、本州の山口県から九州に入って九州を縦に走る鹿児島ルート(博多—鹿児島中央間)と途中から西に走る西九州(長崎)ルート(博多—新鳥栖—長崎間)の2つのルートがあって、前者は全線開通しているが、福岡から佐賀を経て長崎に至る後者のルートは未だ開通しておらず、2022年6月の開業予定を控えて政府を含めた関係各所の間でその在り方を巡って調整中にある。
当然、新幹線が通るということは地元にとって大きな利害に関わるのでセンシティブになっているのだが、JR九州の青柳社長が長崎新聞のインタビューに答えて、「佐賀に駅ビルを作りたいとは思わない」と、佐賀県軽視の発言をしてしまったのだ。新幹線は遠方を短時間で結ぶもの。となれば、途中区間の佐賀は素通りになりがちだ。だから佐賀県はそれまで在来線の取り扱いや負担金と費用対効果から現在の運航案には反対していたのだが、インタビューはそんな意向も取り合わないものだった。
この思わず飛び出た“本音”に佐賀県の山口祥義県知事は不快感を表明、そして前述のように青柳社長が発言を訂正したのだが、当然、不信感が消えるわけはない。
怒りの矛先はJR九州だけではなく長崎県にも向かっている。年末には在来線の維持費を巡ってやはり山口・佐賀県知事が「(長崎県知事が言っていることに)意味が分からない」と不快感を示したのだが、その前には秀島敏行・佐賀市長も、長崎県側からフル規格での早期整備が求められていることに対し「佐賀県を悪者にするような発言が出てきている」と苦言を呈しているのだ。
というように、関係各所の間では佐賀県の意向も「どこ吹く風」の扱いを受けて佐賀県は怒りまくっているわけだが、極め付きは長崎県選出の谷川弥一衆院議員の「韓国か北朝鮮を相手にしている気分」といった発言だ。
よくよく考えてみれば韓国を北朝鮮と一緒にすること自体、失礼な話なのだが、それぐらい対立の根は深いということにしておくべきか。
(猫間滋)