藤井聡太「最年少タイトル防衛」へのマル秘特訓(3)感想戦で「ウフフフ~」

 どれだけAIが将棋界を席捲しようが、対人戦を軽んじているわけではない。だが、列島を猛襲するコロナ禍で「密」を避ける行動様式が、棋士同士の研鑽に大きな変化をもたらしたという。

「棋力を上げるために複数人で議論を交わす『研究会』や1対1で対局する『VS』を前ほど頻繁に行えなくなりました。去年あたりから、直接人に会って対局する機会は全くなくなりました。最近の対人戦といえば、月に1〜2回オンラインで対局するぐらいでしょうか」(屋敷氏)

 将棋会館のある東京や大阪に拠点を置く棋士でさえ、対人戦の確保には手を焼いている。まして、地元・愛知に拠点を置く藤井の場合は言わずもがな。

 対人トレーニングが満足に行えなければ、勝負勘の衰えを招きかねない。それをカバーするのが、対局後の「感想戦」である。その一端は、5月31日の「第6期叡王戦本戦トーナメント」2回戦で垣間見られた。

「かねてから『VS』をともにする研究パートナー、永瀬拓矢王座(28)との対局でした。しばらくご無沙汰だったのか、盤上の積もる話が満載だったようで、対局後の『感想戦』は1時間以上にわたってみっちり行われました。AIでは補えない終盤の局面についても議論を深めたといいます。時には『ウフフフ~』と、笑い声が漏れることも。まるで、アルバム写真のページを一緒にめくるカップルみたいでしたよ」(プロ棋士OB)

 盟友との再会で、心の充電も満タンになったようだ。

 藤井といえば、対局で一手目を指す前に必ずお茶を飲むことで有名だが、将棋のトレーニングにおいてもルーティンを踏んでいく。

「対局前の控え室で解いている『詰め将棋』ですね。かつて雑誌のインタビューで『詰め将棋は必ず解答があるし、対局と違って負けることがないからどんどん好きになった』と答えていましたが、みずから問題を作成するほどにハマッています。趣味と対局終盤のイメトレが半々といったところでしょうか」(将棋専門誌ライター)

 そして、バラエティー色の強い非公式対局でも、早指しに磨きをかける。

「初期の持ち時間が5分で一手ごとに5秒加算される『フィッシャールール』が採用された『ABEMAトーナメント』で、初回の18年と19年に個人で、20年にはチームで優勝しています。トーナメントを勝ち上がることで場数をこなし、終盤の粘り強さを鍛え上げました。今の藤井なら、たとえ1分将棋にもつれ込んでも〝秒〟で正確な手が指せますよ」(プロ棋士OB)

 今年のトーナメントからチームリーダーに就任した藤井。四連覇とともに終盤力にも注目したい。

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