日本で最も高い場所にある鉄道駅として知られるJR小海線の野辺山駅(長野県南牧村)。ちなみに標高は1345.67メートルで、東京スカイツリーの倍以上の高さだ。
しかし、そんな同駅でさえ世界基準の中では全然大したことはない。ちなみに現時点での世界最高所の駅は、中国・チベット自治区にある「唐古拉(タングラ)駅」の海抜5068.63メートル。これは富士山はもとより、ヨーロッパ最高峰のモンブラン(4810メートル)すら凌駕する。
この駅は中国・青海省の西寧とチベットのサラを結ぶ清蔵鉄道の駅として06年に誕生。ただし、開業から今年で15年になるが、同駅での乗降客は未だ1人もいないのだ。
ホームは15両編成の特急列車が余裕をもって停車できるほど長く、漢字の「人」の形をした立派な駅舎もある。だが、駅周辺に街は一切確認できず、建物も人もいない。見えるのは荒涼とした大地だけ。つまり、世界一高い場所にある秘境駅でもあったのだ。
これについて中国の鉄道事情に詳しいライターは、「列車の行き違いのために作った事実上の信号場ですが、世界一の称号欲しさと話題作りのために造ったとも言われています」と話す。
ちなみに実際には多くの列車が駅を通過。停車する一部の列車もドアが開かないため、ホームに降りることはできない。記念撮影用に下車させてもいいような気もするが、それをできない事情があるという。
「中国ゆえに軍事機密上の問題で下車禁止と思われるかもしれませんが、5000メートルを超す高所で空気中の酸素は地上の約半分です。車内は息苦しくならないように気圧と酸素濃度が調整されており、もしドアが開けば酸欠で体調不良を訴える者が続出する可能性があります。最悪、命にかかわるケースもあるでしょう。そのため、乗客の健康を守るという観点からもドアは開けられないのです」(前出・ライター)
そんなふうに言われると、余計に気になってしまう。車内から眺めるだけでもいいからいつか行ってみたいものだ。
(高島昌俊)