「温室効果ガス46%減」の切り札!?「水素発電所」が山梨に誕生

 菅義偉首相は4月におこなわれた気候変動サミットで、2030年度の温室効果ガス削減目標を「13年度比46%減」という高い目標を表明。また「さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていく」と語った。

 地球温暖化を防ぐために不可欠なCO2(二酸化炭素)排出量の削減。資源エネルギー庁がまとめた『総合エネルギー統計』によると、19年度の電力供給における石油や石炭、液化天然ガス(LNG)の化石燃料依存度は84.9%。13年度をピークに下落傾向にあるが東日本大震災発生前の時点で54基あった原発のうち、再稼働しているのはわずか9基。残りは停止中、廃炉となっており、化石燃料依存度を大幅に減らすのが難しい状況だ。

 代替するエネルギーとして、CO2を出さない再生可能エネルギーの拡大が急務。太陽光や水力、風力、地熱、バイオマスなどがあるが、それに加えて次世代のエコエネルギーとして注目されているのが水素発電だ。

 最近は水素自動車(燃料電池車/FCV)という言葉をよく聞くが、理屈は同じで、水素を燃料にして作った電気で電気モーターを回して走るのが水素自動車で、水素から作った電気を家庭に送るのが水素発電である。

 先日、国内4ヶ所でバイオマス発電所を運営する独立系の電力大手のイーレックスは、山梨県富士吉田市に国内初となる商業運転を目的とした水素発電所を建設することを発表。供給量は約100世帯の一般家庭が1年間に使用する電力を賄える程度と規模は小さいが、「同じ再生可能なエネルギーでも太陽光のようにパネルを置くための広大なスペースを確保する必要もなく、風力のように天候に左右されることもない」とメリットを説明するのは電力事情に詳しいジャーナリスト。

 ヨーロッパでは今後20年で水素発電が大きな割合を占めていく見通しで、イギリスでは大手ガス会社のカデントが水素ガス供給網の整備を進めていくと発表。アメリカでも3ヶ所の水素発電所が建設中で、100万世帯の年間消費電力を供給できる大規模なものだ。

「水素発電は化石燃料と違って燃焼させてもCO2も有害物質も発生せず、原発のように扱いも難しくありません。特に建設予定地の山梨には国内の水素燃料・発電の研究施設が集まっており、一大拠点となりつつあります」(前出・ジャーナリスト)

 政府は30年までに原発一基分に相当する1000メガワット分を水素発電でまかなうことを目標に掲げている。現在、FVCの普及に加え、専用の水素ステーションが全国各地に続々と誕生しているが、こうした動きも水素発電を後押しすることになりそうだ。

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