「半導体ナショナリズム」で米中対立が激化!”ホットスポット”台湾が危ない!?

 先進国がコロナのワクチン確保に急いだため「ワクチン・ナショナリズム」と呼ばれるワクチンの囲い込みが問題となっているが、このところ世界的に半導体が不足が続いていることで、こちらも囲い込みの自国優先の動きが目立っている。

「スマホからAI、車、兵器にまであらゆる電子機器に必要なことから『産業のコメ』とまで言われる半導体ですが、昨年11月辺りから世界的に生産が追い付かない状況が続いていて、自動車各社が減産を強いられているような状況です。原因はEV普及での自動車需要や5Gへのインフラ投資の増加に加え、コロナ禍でのスマホやパソコンのテレワーク需要の増加やゲームなどの巣ごもり需要が重なったためです」(経済ジャーナリスト)

 そこで世界の先進各国は調達先の確保と国内生産の強化をして“自国優先”を進めている。その場合、半導体の生産能力で勝るのが台湾、韓国、中国、日本などの東アジア各国だ。だから例えばアメリカは世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の工場誘致に動き、欧州はTSMCや韓国のサムスンの工場誘致で2030年までに域内シェア2割増を目指し、日本もやはり茨城県つくば市へのTSMCの開発拠点誘致に動いているのだが、カギを中国を含めた東アジア諸国が握るとあって、やはりバイデン政権になって激しさを増している米中対立が関係してくる。

「半導体は安全保障にもかかわる問題なので、アメリカは2月に調達先を見直す大統領令に署名が行われています。そこで当然外されるのが中国で、『価値観を共有しない国』からの依存脱却が謳われています」(前出・ジャーナリスト)

 となると今度は政治問題にもなって、当然あの国がホットスポットとして持ち上がってくる。台湾だ。

「アメリカではバイデン政権になって対中国戦略の見直しを行っていますが、そのアメリカでは3月9日にインド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官が『中国が6年以内に台湾に侵攻する可能性がある』との認識を示したばかりです。また18日に行われた米中高官級会談では、アメリカが香港、新疆ウイグル自治区、台湾の問題を念頭に人権侵害を持ち出したのに対し、中国側が『内政干渉だ』と反発してその問題が燻り続けています。中国は台湾産のパイナップルを禁輸措置にして台湾への締め付けを強めているところ。そこにさらに半導体生産の拠点確保という大問題が加わっている状況です」

 あらゆる産業の基盤確保とまでなれば、確かに6年以内の侵攻もあり得るかもしれない。まだパイナップルで済んでいるだけマシということか。

(猫間滋)

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