盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!
2月14日、野村克也氏の遺品のユニホームやバットが、南海ホークスの本拠地だった大阪球場跡地にあるギャラリーに展示された。実は南海のゆかりの品が飾られているギャラリーには、今までは大功労者であるはずのノムさんの写真すらなかった。1977年の退団の際の確執が原因で、ノムさん側が展示を断っていたという。今回は江本孟紀さんが遺族の了承を得てギャラリー改装の発起人となり、記念品が古巣に飾られることになった。
僕の中でもノムさんといえば南海やし、南海といえばノムさん。本人も大阪球場に帰ることができて喜んでいると思う。昨年の2月11日に亡くなってから、1年が経過した。今でも信じられないところがある。ノムさんに会う時はいつも大好きなアンパンを手土産に持っていった。糖尿病やったから「フク、オレを殺す気か」と言いながらもうれしそうやった。「気を使わして悪いな」に「気は使ってません。使ったのはお金です」と冗談で返したりしていた。
そういえば、サッチーこと沙知代夫人にも、脱税で勾留された時にアンパンを差し入れた。後日、丁寧にお礼の手紙が来た。ノムさんの南海退団の原因も、沙知代さんのチームへの口出しが原因やったという。いろいろ騒動を起こしはったけど、僕は悪い印象はない。会えば「いつも主人がお世話になっています」と頭を下げられる方で、テレビで見るような猛女というイメージはなかった。
今年はノムさんがプロの「いろは」を教えた田中将大がメジャーから楽天に帰ってきた。2017年に亡くなった沙知代さんと一緒に、あの世で喜んではると思う。僕もマー君のことに限らず、もっともっとノムさんの話を聞きたかった。
現役時代は神様みたいな存在で、若い頃はそれこそ話しかけることなんてできなかった。わりと気軽に話できるようになったのは引退してからやった。2017年には僕の希望が叶って、「週刊ベースボール」史上最長といわれる2万字の対談が実現した。盗塁を阻止するためのクイックモーションを導入した話など、本当に面白かった。でも、まだまだ話したいことがたくさんあった。このコラムでも対談したかったし、映像にも残しておきたかった。
言うまでもないが、南海だけでなく、プロ野球の大功労者。楽天・石井、ヤクルト・高津、阪神・矢野、西武・辻、日本ハム・栗山中日・与田と、12球団の半分の監督が、ノムさんの監督時代に選手だったのだから、その影響力に今更ながら驚く。いわば「ノムさん教え子世代」。そして今回の田中の楽天復帰。教え子たちが今年のプロ野球を盛り上げてくれるのは間違いない。
それにしてもマー君と対戦できる打者も幸せ者と思わないとアカン。大リーグでボロボロになって帰ってくるわけでなく、バリバリの状態。メジャーに行かなくても、自分の腕試しができるし、若手にとっては貴重な経験となる。ソフトバンクの柳田だけでなく、パの各球団には猛者がそろっている。その対決を想像するだけでもワクワクする。
楽天も相乗効果は相当。昨年は元気がなかった則本も刺激を受けるやろうし、鳴り物入りで入団したドラフト1位の早川にとっても、最高の教材となる。早くコロナが収束して、僕もノムさんの「最高傑作」と言えるマー君を生で見たい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。