いよいよ日本でも2月17日、国立病院などの医療従事者を対象に、米製薬大手ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの接種がスタートした。
世界では既に1億人以上がワクチン接種を受け、新規感染者は減少傾向にあると言われるが、依然として世界各国で変異株が出現。新型コロナウイルスとの闘いは、まだ数年は続くだろうというのが、多くの専門家の見方だ。
現在、世界的には米ファイザーと米モデルナが製造するメッセンジャーRNA(mRNA)タイプのほか、英アストラゼネカ、ロシアのスプートニクVのウイルスベクタータイプ。そして中国製薬大手の中国医薬集団(シノファーム)とシノバック・バイオテックが製造する不活化タイプのワクチンが使用されている。医療ジャーナリストが語る。
「このうちメッセンジャーRNAタイプの米ファイザー製ワクチンは有効性95%と、最も信頼性が高いワクチンとして、世界35カ国に承認されており、英アストラゼネカ製ワクチンも、ファイザーに続いて信頼性が高く、現在31カ国で承認されています。そして、意外ですがロシアのスプートニクVも、当初は第3段階の臨床試験を済ませていない、あるいは国内での接種希望者が少ないなどとされ不人気でしたが、いざ蓋を開けてみると、有効性約92%とメッセンジャーRNAタイプに引けを取らない有効性が確認され、世界26カ国で承認。事実上、3番手につけている人気ワクチンと言えます」
一方、「粗悪なワクチン」として、低評価なのが中国製の不活化タイプだ。
「このタイプは、熱や化学物質で不活化したウイルスを体内に投与し、抗体をつくるというもの。インフルエンザワクチンなどで使用されているものの、新型コロナウイルスは増殖スピードがインフルエンザよりはるかに遅いため、抗体ができにくい。つまり、感染を防ぐ効果が弱いという指摘が多いんです。実際、約1万3000人が参加したブラジルの後期臨床試験での有効性が50.38%。これはWHOが定める50%以上の基準をなんとかクリアしたものの、米ファイザーや米モデルナが開発したメッセンジャーRNA型のワクチンの有効率と比べると雲泥の差がある。さらに、シノバックが開発したワクチンを接種後、副反応が出て治療を余儀なくされたという噂も絶えません。そう考えると、やはり中国製ワクチンの接種には、まだ大きなリスクがつきまとっていると考えていいでしょうね」(前出・ジャーナリスト)
ところが、そんな逆風をよそに「ワクチン外交」で世界にアピールしたい中国では、すでにフィリピンやミャンマー、カンボジア、インドネシアなどに30万回〜100万回分の寄付を申し出ている。
「諸外国に向けた大盤振る舞いとも言えますが、中国の国内に目を向ければ、ワクチン不足による混乱に便乗する形で偽造ビジネスが横行。2月上旬には偽ワクチン製造に関わった80人が当局により逮捕され、事件により、3000回分以上の偽ワクチンが押収されました。偽ワクチンの中身は生理用食塩水で、10本入り1セットが200元(約3200円)。それをワクチンが確保できない国や、接種が遅れている国などに販売する目的だったようですが、同様の摘発が後を絶たないと言われていますからね。ただでさえ、有効性が疑問視されるワクチンの、さらにニセモノまで作ってしまうとは……いやはや、開いた口が塞がりませんよ」(前出・ジャーナリスト)
ひと口に「ワクチン」といっても、その有効性はさまざま。少なくとも効果ゼロの偽ワクチンだけはつかまされないよう、注意が必要だ。
(灯倫太郎)