大手携帯料金「20GB2000円台」の新プラン開始でMVNOが迎える正念場

 NTTドコモとau、ソフトバンクの主要キャリアが出揃った「20GB2000円台」の携帯電話値下げプラン。あたかも足並みを揃えたかのように3月のサービス開始予定となっているが、一方で泣きを見ることになったのが格安SIM携帯のMVNO業者だ。

「携帯大手(MNO)のメインブランドより安い料金でMVNOがやっていけるのは、自社回線を有する携帯大手からネットワークを借りることで、設備コストをおさえているからです。いわば大手の軒下で商いをさせてもらっている状態。ところが大家さんの大手が、MVNOと同等もしくは割安な値段で高品質のモノを売ろうというのだからMVNO各社はたまりません。各社からなるテレコムサービス協会のMVNO委員会は、1月18日に総務所に窮状を訴える要望書を提出、翌19日にも総務省の有識者会議の場で早期の事態の改善を訴えました」(経済ジャーナリスト)

 例えば大手が出した新プランと同様の20GBのサービスとなると、イオンモバイルで3280円、mineoだと4590円となり、おおよそ1000〜1500円も高くなってしまう。しかもauのサブブランドであるUQモバイルが「3GB1480円」という「くりこしプランS」を発表し、MVNO内での値下げ競争はさらに拍車がかかりそうだ。

 それじゃマズいと、ドコモが大手3社の先陣を切ってahamoを発表した直後の12月7日、MVNOでは老舗の日本通信が同じ20GBで1980円の格安プランを出してきたものの(12月10日のサービス開始時は16GB)、これは4Gでの話。大手の新プランは安いだけじゃなく5Gも対応しているのだからさらにMVNO各社は打つ手がないように思える。

「大手がMVNO各社に貸している接続料は、原価に利益を乗せた金額になっていますが、MVNO各社は今の接続料ではやっていけないので、値段を下げるよう要望しています。総務省ではもともと2020年から3年間で値下げさせるとしていましたが、それじゃ間に合わないというわけです」(前出・ジャーナリスト)

 客観的に見れば早期に破綻するMVNO業者が現れる可能性が高そうに思えるのだが、総務省はどう判断するのか。いくらMVNO各社が窮状を訴えようとも、大手3社にすれば総務省の指導の下、ひいては菅首相の要望の通りにスマホ代を引き下げた結果に過ぎない。しかもその“貸し”があるから、接続料の早期の値下げに応じるとは思えない。大手には値段を下げさせたはいいが、下げたら下げたで競争相手のMVNOが立ちいかなくなって市場の競争原理が失われてしまうかもしれない事態に、総務省はジレンマを抱えた格好だ。

 2001年に前出の日本通信がサービスを開始して以来、一時は700近くの業者が乱立したMVNOだが、これから正念場を迎えそうだ。

(猫間滋)

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