「12球団ワースト」の数値が響いたようだ。
昨年12月に国内フリーエージェント権を行使した松永昂大投手が1月27日に、千葉ロッテ残留を表明した。その残留会見で出たのが、「(他球団からの)正式なオファーがなかった」という衝撃的な発言。昨季こそ故障のため出場機会は激減したが、2018年には60試合に登板したタフネスリリーバーだ。まして、曲がり幅の大きいスライダーを得意とする左投手である。「オファーなし」の言葉に、記者団も驚いて“質問の間”を空けてしまったほどだ。
「昨季、登板機会が激減したのは故障だけが理由ではないようです。唐川、ハーマン、益田と繋いでいく『継投パターン』が確立され、チーム構想から漏れたとの情報も伝わっていました」(ベテラン記者)
これまでの松永は「対左バッター」のワンポイントという起用も多かった。しかし、左のリリーバーといえば、昨季途中、楽天から巨人に移籍して大きな戦力になった高梨雄平の例がある。だからこそ、「オファーなし」の言葉に驚いたのだが、こんな指摘も聞かれた。
「12球団ワーストの数字が影響したようですね」(球界関係者)
千葉ロッテのチーム打率は、2割3分5厘で12球団ワースト。春季キャンプに平成の三冠王・松中信彦氏を招聘するなど底上げに必死だが、ワーストはもう一つある。球団別平均年俸だ。昨季の千葉ロッテは平均3035万円、選手会の発表によれば、1位のソフトバンクの半分以下となっている。
「松永は現状維持の年俸で残留しました」(前出・球界関係者)
松永の推定年俸は7500万円。20年のチームトップは益田直也の2億円で、松永は「人的補償」が発生するBランク選手だった。もしも高給取りがわんさかいる別の球団だったら、球団内の年棒ランキングで11位以下となり、人的補償を必要としないCランクとなっていたかもしれない。
7000万円台の年俸をプロ野球全体で見てみると、140位以下。プロ野球全体での平均年俸は4000万円台だが、千葉ロッテは、これからの活躍が期待される若手が多いため、一部の主力選手以外は“薄給”なのである。
コツコツと登板試合数を積み上げてきたベテラン左腕に対し、7500万円の年俸は安すぎるくらいだが、他球団は「中継ぎのリリーバーを獲得するのに人的補償が発生するのは…」と二の足を踏んでしまったようだ。
千葉ロッテにしてみれば、計算の立つリリーバーの残留はプラス材料。とはいえ、「オファーなし」の一因が“球界ワーストの年俸”とは皮肉なものである。
(スポーツライター・飯山満)