ダイヤ改正でついに廃止!「発着列車0本」の秘境駅がファンに愛された理由

 人が列車に乗り降りする鉄道駅。だが、なかには1日の発着本数が0本、つまり全列車が通過するという、従来の役割を果たしていない駅もある。そのひとつが福島・山形の県境から10キロほど離れた場所にあるJR奥羽本線の赤岩駅(福島県福島市)だ。

 険しい山に挟まれたちょうど谷底に位置する同駅は「休止駅」という扱い。実は、在来線だけでなく山形新幹線が頻繁に行き来する区間であることに加え、駅の敷地内には列車に電力を供給するための変電所や保線作業のための設備もある。廃止に伴う駅の撤去作業の手間を考慮して休止状態にしているとも言われている。

 だが、JR東日本は今年3月のダイヤ改正で赤岩駅の廃止を発表。時間の問題とは見られていたが、「東北屈指の秘境駅として知られており、休止からわずか4年弱での廃駅に惜しむファンは多い」と話すのは鉄道ライター。

 かつては駅周辺に複数の集落があり、学校や商店なども存在。最盛期の昭和30年代には1日100人近い利用があったが、駅最寄りの赤岩やイラ窪(伊良窪)地域は限界集落どころか現在の住民は0人。福島市の中心部からは12キロ程度しか離れていないとはいえ、山奥なので平地と違って冬場は雪深い。細く狭い山道を何キロも進まなければならず、ベッドタウンとして開発されることもなかった。

 今はまだホームや待合室、山形新幹線開通前に使用されていた旧駅のホームなどが残っているが、3月の廃止後は関係者以外の敷地内への立ち入りが禁止される。かといって今シーズンは積雪量が多いため、車で訪れるにも廃止前の駅訪問は事実上困難な状況だ。

「駅に向かう一本道の途中からは山間の景色が一望でき、絶景ポイントとして鉄道ファンだけでなくアマチュア写真家にも人気でした。特に紅葉の季節は最高の眺めが楽しめたんですけどね」(前出・鉄道ライター)

 利用客がいない休止駅でも残しておけば維持のためのコストがかかる。残念ではあるが廃止になるのは時代の流れなのかもしれない。

(高島昌俊)

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