政府が再三呼びかけてもなかなか浸透しきれない企業のテレワーク化。それでも列車の利用客は確実に減少しており、朝のラッシュが以前より緩和されたと感じている人も多いはずだ。
だが、首都圏ではこの春から朝の通勤時間が再び混雑することが確実視されている。
「実は、鉄道各社が3月のダイヤ改正で朝の列車の本数を削減することを発表したためです」(鉄道ジャーナリスト)
JR東日本の場合、首都圏発着の路線のほとんどが対象。最も運行本数の多い朝の通勤時間帯の削減本数は、中央・総武線各駅停車(千葉方面行き)と常磐線快速が4本をはじめ、常磐線各駅停車と山手線外回りが3本、山手線内回りや東海道線、宇都宮線、京浜東北・根岸線(大船方面行き)、横浜線、京葉線が2本となっている。
「他の複数のJR線でも1本削減されます。たかが1本とはいえ、車両数の多い首都圏の路線ではラッシュ時だと1編成あたりの乗客数は2000人を超えます。そのシワ寄せで同じ時間帯の残りの列車がさらに混雑するのは容易に想像できます」(同)
また、大手私鉄の西武や東武も同じく3月から削減を実施。さらに朝以外の時間帯ではJRに加え、東急、小田急、東京メトロなどの各社でも本数を減らす予定だ。
きっかけはコロナ禍による利用客の減少による経営悪化だが、以前は朝の時間帯は鉄道会社にとって決して稼ぎ時というわけではなかったという。
「運行本数だけでなく駅員や運転士などの人員も増員しなければならず、かといって採算に見合っているとも言い難い状況でした。鉄道会社にとっては大きな負担となっており、このタイミングで削減するのは当然の経営判断です」(同)
しかも、今回の削減は一時的な措置ではない。仮にコロナが収束しても利用者数が以前の水準に戻らない限り、運行本数を増やすのは難しいだろう。列車通勤の方にとっては、今以上の満員電車に揺られる日々が続きそうだ。
(高島昌俊)