コロナ禍にあって外食産業の苦境が伝えられる中、これまで焼肉店と並ぶ“勝ち組”と目されてきた回転寿司に陰りが見えはじめているという。
「くら寿司では9月から10月にかけて『鬼滅の刃』とのコラボレーションが好調だったせいもあって、11月の既存店売上高が前年比で約134%と好調でしたが、12月は同94%と前年実績を割り込む形になりました。スシローも既存店売上高では11月、12月と2カ月連続で前年実績を下回りました」(経済紙記者)
要因に挙げられるのは、やはりコロナとGoToキャンペーンの終了だろう。いくら勝ち組であっても世情はあまりにも苦しいと言わざるを得ない。そこで回復のための打開に努める両社だが、共に傾向として認められるのが、都心型店舗の出店攻勢だ。
「くら寿司ではこれまで10店舗ほどでしかなかった都心型店舗を増やすべく、手始めとして渋谷駅前店、西新宿店を1月19日にグランドオープン。両店は今の時代に合った、店員を介さずにスマホで注文ができる『非接触型店舗』となっています。スシローでは16年から都心への出店を展開していましたが、それでも昨年12月時点で全体の5%にも届かないほどでした。そこで昨年から都内の駅前などに出店攻勢を強めています」(経済ジャーナリスト)
ちなみに気をつけなくてはならないのは、共に1皿2貫100円からという値段設定がウリだが、都心型店舗ではくら寿司が110円からでスシローの場合は120円からとなっていること。
「回転寿司はネタによっては50%以上という高い原価率になるので、コストをおさえる意味でも出店はもっぱら賃料の安いロードサイド店が中心でしたが、今後は“市街戦”が展開されることになります。この出店ラッシュは、コロナ禍で他の飲食店が撤退したことで、これまで入り込む余地のなかった好物件が転がるようになったこと。それと、AI化や自動化でオペレーションでの省人化が進んで、効率的な店舗運営が可能になったからです」(前出・経済ジャーナリスト)
すでに居酒屋大手の「ワタミ」は焼肉店への業態転換を発表しているが、都心の駅前は従来の居酒屋にかわって、回転寿司と焼肉店が幅を利かせることになりそうだ。
(猫間滋)