「特等のうすのろ」声はすれども姿は見せず…金与正に「妊娠説」が流れた理由

 新年1月5日から平壌で開催されていた朝鮮労働党第8回大会が12日に終了。金正恩氏が建国者である祖父の金日成、父親の金正日に続き、北朝鮮の絶対的存在を意味する「党総書記」のポストに就任したことで、国内では、同氏の権威がさらに高められることになった。

 一方、大会前は党指導部入りが確実と言われていた、妹・金与正氏は、幹部である政治局員候補から外れ、「党副部長」に「降格」。この驚きの人事を巡り、与正氏の動静に今、注目が集まっている。在日韓国紙記者が語る。

「与正氏が初めてメディアの前に姿を現したのは、2011年に行われた金正日総書記の葬儀でしたが、おとなしい印象を感じさせる女性でした。その後、2017年10月には政治局員候補に就任。18年には平昌冬季五輪に出席し笑顔を振りまいたことで、当時は韓国内でも柔和なメッセンジャーとして、もてはやされたものです。ところが、昨年5月、韓国の脱北者団体が不埒な合成写真を用いたビラを撒くと、その言動が一変。文在寅大統領を『吐き気がする』『ムカつく』と罵倒するなど、強硬発言を連発。6月には南北融和の象徴である南北共同連絡事務所を爆破するなど、その豹変ぶりに韓国政府も度肝を抜かれたと言われています」

 さらに、降格が決まった今年1月12日にも、韓国政府を「特等の“うすのろ”」とこき下ろす談話を発表、暴言はエスカレートするばかりだが…。

「この談話は朝鮮中央通信が13日に伝えたものですから、北の公式コメントと言っていい。つまり、与正氏はポストこそ『降格』の形はとってはいるものの、政治的な立ち位置と役割は従来通りであるということです。しかも、今年最初の談話がこの過激発言ですからね。対韓国業務に関しては強硬路線を貫いていくことは間違いないでしょうね」(前出・韓国紙記者)

 だが、その過激な暴言とは裏腹に、昨年夏以降、表舞台に姿を見せていないことで、韓国では今、与正氏の「体調不良説」や「新型コロナ警戒説」、さらには「妊娠説」が囁かれているという。

「与正氏が最後に公の場に姿を現したのは、昨年7月27日に開催された第6回全国老兵大会で、以来、党中央委員会政治局会議にも、朝鮮労働党の中央委員会総会にも姿を見せていません。そんなこともあり、一部では“3人目”を妊娠したため、表舞台に出てこれなくなったのでは、という噂が囁かれているんです」(前出・韓国紙記者)

 韓国メディアは、外交筋の情報として、与正氏が2015年に金日成総合大時代の同級生と結婚し、その後第1子を出産。そして、18年春には第2子を出産したと伝えていた。

「18年に与正氏が平壌五輪開会式に派遣された際、与正氏自身が韓国政府関係者に『現在、妊娠7カ月なんです』と語ったという報道もありましたからね。それが事実だとすると、与正氏には2人の子供がいることになります。とはいえ、金ファミリーについては、生年月日ですらベールに包まれ、正確な年齢すらわかっていませんから、今回の妊娠説もどこまで信憑性があるものかどうか…。ただ、かれこれ半年もの間、姿を見せていないことを考えると、表舞台に出てこれない何らかの理由があることは事実。今回の姿なき暴言に、違和感を覚えざるをえません」(北朝鮮事情に詳しいジャーナリスト)

 韓国に対して強硬路線を継続し、バイデン政権への移行で米朝関係の悪化が予想される北朝鮮。“毒舌姫”の動向から目が離せそうにない。

(灯倫太郎)

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