上から目線で「日朝首脳会談」をチラつかせる北朝鮮“実は兵力弱体化”のドン詰まり

「岸田首相が最近、あるルートを通じ『早期に金正恩総書記と直接会いたい』との意向を伝えてきた。だが自分が願い、決心したからといって、わが国家の指導部と会えるものではないと悟るべきである」

 北朝鮮の金正恩総書記の妹で朝鮮労働党副部長である金与正(キム・ヨジュン)氏が、朝鮮中央通信を通じまたもや上から目線でそんな談話を配信したのは3月25日のこと。与正氏いわく、首脳会談実現のために重要なのは日本の政治的決断で、「我々の主権的権利行使に干渉し、拉致問題に固執するなら、岸田首相の構想は人気集めにすぎないという評判を避けられない」として、日本側が強く要求し続ける拉致問題を従来通り「これ以上解決することも、知る手段もない問題」と位置づけ、対応姿勢の抜本的見直しを求めた。
 
 これに対し岸田首相は同日の参議院予算委員会で、「(朝鮮中央通信の)報道は承知していない」とした上で「拉致問題などの諸課題を解決するためにはトップの会談が重要だということで、私直轄のレベルで北朝鮮に対する様々な働きかけを行ってきている。これは従来、申し上げてきた通りだ」と述べるにとどまった。

 それにしても、2月の「岸田首相が平壌を訪問する日が来ることもありうる」という談話に次いで、今年に入りなぜ与正氏は2度も談話を発表したのか。むろん、その背景には正恩氏の指示があることは明らかだが、意図はどこにあるのか。

「やはり大きな目的の一つと考えられるのが、トランプ再選による米朝首脳会談実現でしょうね。そのためには事前に日朝首脳会談を再開し、日本との関係を修復しておきたい思惑があるのでしょう」(同)

 というのも昨年、正恩氏がロシアを訪れて以来、露朝関係はこれまでになく蜜月になった一方、それまで後ろ盾となってきた中国が北朝鮮と距離を置くようになってきた。昨年来、北朝鮮はロシアに対し、弾薬を数百万発も供与するなど外貨獲得に躍起になってきたが、あまりに大量に供給したがために自国の武器弾薬が枯渇してしまっている。結果、現状では仮に韓国に攻め入られた場合、戦争も出来ない状況という。

「となれば、やはり中国に支援してもらわなければなりません。そこで日本との関係を改善すれば、対米国との関係を見据えると同時に中国の気を引くこともできる。さらには、日韓関係を悪化させることができれば、敵国と位置づける韓国を揺さぶることも可能。与正談話には、そんな思惑が見え隠れしますね」(同)

 そして同時に、「拉致問題」をぎりぎりまで引っ張り日本を焦らせ、最後は条件を釣り上げる――。それが北朝鮮の狙いではないか、という専門家も少なくない。

「獲得した外貨の大半がミサイルや核開発につぎ込まれているという北朝鮮は、今もなお国民が食糧難に直面しており、それが結果的に兵力弱体化につながっているのが現状。そのため国連の制裁緩和は先の話になるとしても、なんとか日本との関係を修復し、万景峰号入港禁止など日本の独自制裁を解除させて経済を復興したい。つまり日本側からすれば、交渉次第ではまだ拉致問題解決の糸口もあるということ。政府にはその点を踏まえ、粘り強く交渉に臨んでもらいたいものです」(同)

 したたかな北朝鮮とどう交渉していくのか。日朝首脳会談に行方に注目だ。

(灯倫太郎)

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