ロシアを訪問中だった北朝鮮の金正恩総書記に随行、15日にはハバロフスクの戦闘機工場を訪れた際の写真が北朝鮮メディアで紹介され、久しぶりにその姿が確認された妹・与正氏。ところが、韓国の「聯合ニュース」や「中央日報」などが、与正氏が手に持つバッグが、オンライン・ショップで960万ウォン(100万円程度)もする、フランスの高級ブランド「クリスチャン・ディオール」の「LADY DIORカナージュ・ウルトラマット・カーフスキン」だったと報道。貧困で餓死者が続出する中、こんな高級バックを愛用し堂々とメディアの前に登場する与正氏に疑問の声が上がっているが、北朝鮮ウォッチャーはこう語る。
「北朝鮮では、今年3月、ジュエ氏とみられる娘がICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射現場で着用していたコートが25万円相当のクリスチャン・ディオールのものだと報じられ、国内をざわつかせたばかりですからね。むろん、北朝鮮の国民が表だって批判することはありませんが、政府もそういう空気には相当敏感になっている。その証拠にこれ以降、ジュエ氏はしばらく公の場所に姿を見せませんでしたからね。ただ、あの国では金一族に苦言を呈する者はいないため、時々こういった国民感情を逆なでする写真や映像が出てしまうのです」
かねてから、金一族の高級ブランド好きは有名な話で、与正氏だけでなく正恩夫人・李雪主氏も、華やかなワンピースにイヤリングやブローチ、ティファニーのネックレス…という出で立ちで公の場に登場する場面が少なくない。
「李雪主氏はイギリスの故・ダイアナ妃のように、北朝鮮のファッションリーダーを自認しているとの話もあり、以前から彼女のファッションは、北朝鮮女性の憧れの的です」(同)
北朝鮮における外交姿勢は、長年、コワモテの制服組が出てくればケンカ腰。逆に、着ているスーツは地味なものの、ミニスカート姿の与正氏を起用すれば、融和を求めるサインだとされてきた。つまり、与正氏のファッションは政治的意味合いが強かったとされ、一説には、与正氏の衣装は韓国のファッション誌を参考に、中国から最上級の生地を入手して高級ブランドに似た洋服に仕立てられているという噂もある。
とはいえ、高級生地の中には、禁止されているぜいたく品の対象になるものもあり、そうなると、やはり金一族だけは別格、と考えていいだろう。
韓国統計庁によれば、2022年度の北朝鮮の国民総所得(GNI)は36兆7000億ウォン(約3兆9700億円)。これは韓国のほぼ60分の1の水準で、1人当たりのGNIも韓国の約30分の1(142万ウォン程度)で、前年よりも0.2%減少しているという。
そうした国民が喘ぐ状況の中での、ジュエ氏の25万円のコートに続く、与正氏の100万円の高級バックとなるわけで、食料を巡り犯罪が多発している北朝鮮において、この画像は余りにも刺激的だったことだけは間違いないようだ。
(灯倫太郎)