ソフトバンク千賀滉大「4億円更改」に見たメジャーの夢と“単年契約”の謎

 笑顔の更改後会見のウラは…。福岡ソフトバンクホークスの千賀滉大投手が契約更改に臨んだのは昨年12月26日だった。その後の会見では記者団のリクエストに応じて笑顔でポーズを取るなど、時折笑顔も見せていたが、交渉時間の長さを懸念する声も聞かれた。1億円アップの4億円プラス出来高(推定)、ロング交渉となった理由は、ポスティングシステムによる米球界挑戦についてだ。

「球団の方針は一貫しています。海外FA権を行使しての挑戦であればともかく、ポスティングシステムによる選手の流出は絶対に認めないということでしょう」(ベテラン記者)

 ロング交渉となった理由は、単なる「ポスティングシステムを認める、認めない」のやり取りのせいではない。また、千賀が米球界挑戦の意思表明は今に始まったことではない。千賀もポスティングシステムを認めないとする球団の方針はわかっているはすだ。

 両者はもう一歩、踏み込んだ話し合いをしたようだ。

「なぜ、ソフトバンクがポスティングシステムを認めないのかという話し合いは、とっくに終わっています。『世界一を目指すから』であって、千賀もそこに意見し、自分の気持ちをぶつけても変わらないことはわかっています。もちろん、そこには国内FA権も絡んでいました」(球界関係者)

 順調に行けば、千賀は最短で2022年オフにも海外FA権を取得する。その前の21年に国内FA権がある。それに対し、球団は複数年契約を提示。現会長付特別アドバイザーの城島健司氏、独立リーグ・栃木でもプレーした川崎宗則内野手、和田毅投手など、海外FA権を行使して渡米した前例から、22年オフは引き止めることはしないだろう。しかし、国内流出を防ぐ2年契約ではなく、3年契約が打診されたそうだ。

「海外FA権取得後、せめて1年でいいから残ってくれという意味です。千賀がそれを拒み、球団は国内FA権を行使しない確約として、2年契約を結ぼうとしました。千賀に国内の他球団に移籍する意志がないことか確認され、単年での契約がようやく決まりました」(前出・球界関係者)

 現役選手としては和田だけだが、城島氏もチームに戻ってきた。FA権の行使が関係の終焉ではないことも伝えられたという。会見で菅野らの米交渉を指して、「(メジャー挑戦が)身近に感じるようになった」とも語っていた。その言葉からもポスティングシステムへの未練は感じられたが、海外FA権取得までの間、残留を確実にしたいとした球団の誠意は十分に伝わったようだ。

 米球界への思いは、今回の契約更改をもって、いったん封印ということになりそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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