世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「阪神は16年ぶりの優勝チャンス」

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 昨年はコロナ禍の大変な1年になったけど、娯楽という面でプロ野球が果たした役割は大きかった。6月に開幕して無事に日本シリーズまで完走した。僕も球場に行けず自宅でのテレビ観戦が多かったけど、野球があることで救われた面が大きい。選手たちも、プレーできる喜びやファンの応援のありがたさをあらためて感じた1年になったと思う。今年は3月26日に開幕して、143試合を行う予定。まだまだコロナの終息は見えないけど、夢や感動を与えるシーズンになってほしい。

 ところで、阪神にとっては05年以来、16年ぶりリーグ優勝の大チャンスになる。阪神はドラフトで近大・佐藤を4球団競合で引き当てて以来、いい流れが来た感じで、オフは計算どおりの補強ができた。ロッテを自由契約になった日米通算95勝のチェンを獲得。韓国球界で昨季20勝(2敗)をマークした右腕のアルカンタラ、同じく韓国で打率3割4分9厘、47本塁打、135打点の好成績を残したスイッチヒッターのロハスの入団が決定的になっている。それ以上に大きいのが、米球界流出の可能性が高まっていたスアレスが逆転残留したこと。抑え投手は経験が大事やし、昨季セーブ王のスアレスが抜ければ、チームのアキレス腱になるところやった。

 昨年は巨人以外の4球団には勝ち越しての2位。これだけの補強をしてもらったら、あとは3年契約最終年の矢野監督がうまく舵取りをするだけ。外国人は8人体制となり、1軍枠をどうするか、金の卵をどのように育てるのか。昨年以上に悩むことは多くなる。でも、誰に何を言われようが「覚悟」を持って采配してほしい。賛否は別にして、ソフトバンクの工藤監督には昨年、ベテランの内川を2軍漬けにする非情さがあった。矢野監督は優しいから、もう少し厳しさが欲しいところ。そういう面では昨年、藤川が引退、福留、能見が移籍したことで、配慮が必要なベテランは糸井ぐらい。より思い切ってタクトを振りやすくなった。

 まずは、開幕までにしっかりレギュラーを見定めることが大切や。昨年は巨人との開幕3連戦に3連敗すると、2勝8敗と大きく出遅れた。正捕手があやふややったし、4番ボーアも不安を抱えながらのスタートやった。シーズンが終わってみれば、開幕スタメンから外れた大山やサンズに救われた。今年は「このメンバーで1年戦う」という信念を持った開幕スタメンで臨んでほしい。スタートでつまずくことがあれば、契約最終年だけに関西のマスコミは早々に騒がしくなるのは間違いない。例年以上にスタートが大事になる。

 キーマンとなるのが、投手では藤浪、野手では大山。藤浪は昨季、リリーフを経験したことで、先発に戻って復調の兆しがあった。制球に不安さえなくなれば、軽く2桁勝つ力を持っている。藤浪が完全復調すれば、西、秋山、高橋、青柳、チェン、アルカンタラと、リーグで屈指の先発陣がそろう。

 大山は主将に指名されたように、4番で働いてもらわんと困る選手。本来、ほんまのチームリーダーは胸の「Cマーク」や監督からの指名がなくても、自然とチームを引っ張る形になる。大山の場合は背中で引っ張るタイプやから、余計にしっかり成績を残さないといけない。阪神の優勝は矢野監督、藤浪、大山、この3人にかかっている。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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