政府が「陸上養殖」を本格支援、サバの刺身が普及しそうな理由とは?

 1月3日、政府が代替肉や陸上養殖など「フードテック」を日本の成長産業に育てるため、支援を本格化させることがNHKにより報じられた。新年度からはフードテックを支援する事業や海外展開を目指す企業に最大で4000万円を補助する事業もはじめる計画だという。

「フードテックはフードとテクノロジーを合わせた造語で、最新技術を駆使して作り上げた食品や調理法などを指します。環境に配慮したヘルシーな食事とあって世界的に大きなムーブメントとなっていて、2025年までには約700兆円の市場規模になるとの試算もあり、日本も乗り遅れまいと国をあげて支援をスタートさせようというわけです」(社会部記者)

 そんなフードテックの中でも、特に日本で注目を集めているのが陸上養殖だ。陸上養殖とは読んで字のごとく陸上で魚介を養殖すること。海上養殖では台風など自然災害によって被害を受けることがあるが、陸上養殖では水質や水温をコントロールすることが比較的容易で、ウイルス感染やエサが無くなる心配もなく、海上よりも低コストかつ、安全に育てることができるという。

「養殖、しかも陸上というと味のほうを心配される方もいると思いますが、快適かつ安全な環境で育つため海上養殖よりも味が良く、バナメイエビやトラフグなどは天然物に近いという専門家の意見もあります。また、陸上で養殖した牡蠣などは海中のウイルスに感染しないことから、生で食べても食あたりをおこさないといったメリットも見込めるのです。また、最近では海水温の上昇や中国漁船による乱獲により、サンマやスルメイカなど様々な魚介が歴史的な不漁に陥っているため、陸上養殖は飛躍的に需要が伸びる可能性を秘めています」(フードジャーナリスト)

 陸上養殖で防げるのはウイルス感染だけではない。

「意外に思われるかもしれませんが、JR西日本が数年前から取り組んでいるのがサバの陸上養殖。サバは内臓や内臓に近い部位にアニサキスという寄生虫が潜んでいることが多く、生食には適さない魚と言われていましたが、生餌を与えないなど徹底した管理によって、酢でしめないサバの刺身が当たり前のように食べられる時代がすぐそこまで来ているかもしれません」(前出・フードジャーナリスト)

 食の革命が起きるかもしれない。

(小林洋三)

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