三浦大輔・新監督は“あの光景”を見ていたという。それが今回の「即決」につながった。
梶谷隆幸外野手の巨人FA移籍にともない、横浜DeNAベイスターズが、田中俊太内野手を人的補償で一本釣りした。両球団とも、28人のプロテクト名簿が交わされた日時を明確にしていない。しかし、梶谷が巨人選手として公示されたのは、12月14日。田中の移籍が発表されたのは18日だから、DeNA側が“目星をつけていた”と言っていいだろう。
「シーズン半ば、阿部慎之助・二軍監督が田中に付きっきりになって打撃指導をしていました。終盤、一軍昇格できたのは阿部二軍監督の指導の賜物です。田中はファーム戦の前、阿部二軍監督の厳しい声を受けながら、必死にバットを振り続けていました」(関係者)
二軍を指揮していた三浦大輔・前二軍監督も足を止め、遠巻きにその熱心さを見入っていたそうだ。手薄な二遊間を補うため、そして、この必死さが近い将来、きっと開花すると確信したのだろう。
「DeNAの二遊間が頼りないのは本当です。大和、柴田は打撃面で期待できませんし、倉本の打撃は好不調の波が大きい。でも、クリーンナップ候補の伊藤裕季也、19年ドラフト1位の森敬斗も控えています」(スポーツ紙記者)
今年のドラフト2位の牧秀悟内野手もいる。そのため、田中のレギュラー獲得に悲観的な声も聞かれた。「内野、外野も守れる便利屋」といった起用法も予想されるが、そうではないという。
「来シーズン、順調に行けば、三塁の宮﨑敏郎がフリーエージェント権を取得します。梶谷の次は宮﨑なんてことにもなりまねません」(前出・関係者)
田中のレギュラー獲得のチャンスは、二遊間だけではないようだ。阿部二軍監督に鍛えられた打撃面で結果を出せば、来年は二遊間、再来年はサードで出場ということも十分にあり得る。DeNAも宮﨑の慰留失敗に備え、田中を選んだのかもしれない。
田中が見せた試合前の懸命な努力。「頑張っていれば、誰かが見ていてくれる」というのは本当のようだ。
(スポーツライター・飯山満)