雑誌業界において、暮れの風物詩となった「日経トレンディ」の「ヒット大予測」特集。毎年購入しているファンは多いのではないだろうか。実際、この特集記事を投資などに活用している人は多く、ある投資家は「2019年のヒット予測で『ワークマンプラス』が1位になった時は『なんでまた…』と疑いを持ったものですが、実際、この年のワークマンは大躍進。年明けに3000円台だった株価は1万円の大台に達して、その先見性に驚かされたものです」と振り返る。
こうした期待の声を背負って11月4日に発売された「日経トレンディ」12月号。特集記事「2021ヒット予測」で第1位に選ばれたのは「無人駅&辺境グランピング」。2位以下に「多視点スポーツ観戦」、「ビヨンド副業」、「Loop」、「コオロギフード」と耳慣れないワードが続く。詳細はぜひ雑誌を購入して確認してほしい。
一方で気になるのが、1年前に発表された「2020ヒット予測」の“その後”だ。実際にAmazonで中古誌(写真)を購入し、手に取ってみる。ページをめくってそのラインナップを見ると、いかにコロナ禍が予想外の大災厄であったか、日本経済に与えた爪痕の大きさがうかがい知れる。
1位は進化型のパブリックビューイングにより全国各地のフェス会場”で盛り上がりを見せるという「どこでも東京五輪」、2位は2019年1月に2020年いっぱいでの活動休止が報じられていた「嵐ロス」、3位は2020年の夏に大阪USJで開業予定だった「スーパー・ニンテンドー・ワールド」。2位の嵐ロスを除いて、延期されたイベント、アトラクションがトップ3に入っていたことで、いかにコロナの爪痕が大きかったことがわかる。もしも新型コロナウイルスがここまで感染拡大していなければ…2020年のヒット予測は妥当な結果になっていただろう。また、コロナ禍を想定せずに4位にスマホ決済のさらなる普及といった「国民総キャッシュレス」を挙げたのはさすがの着眼点としか言いようがない。
経済ジャーナリストはこう話す。
「コロナがなければもっと流行しただろうな…と思うヒット予備軍が目白押しでしたね。なかでも注目したのは7位の冷却服『レオンポケット』。ソニーが発売した“着るクーラー”とも言うべき商品で、実際、品切れするほどの人気ぶりでした。もしもコロナ禍でリモートワークが普及しなければ、別メーカーから発売された類似商品も含めて、サラリーマンから絶大な支持を集めたはず。あとは14位の『低酸素ジム』。こちらは低酸素状態を人工的に作り出し、4倍の運動効果が得られるというもの。五輪期間中にアスリートが利用し、メダルでも獲得しようものなら、かなり大きな宣伝効果が見込めたはず。23位の『相乗りタクシー』は、各社の配車アプリを使うことで同じ方面に向かう人との相乗りをマッチング。料金が4割ほど安くなるとあって、ブームになるかと思いきや、こちらも不特定の人間との“濃厚接触”につながるイメージからあまり普及していない様子。なお、エンタメでは『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が11位と期待されていながら、公開は翌年に延期。300億円超えの大ヒットとなった『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』はまったくのノーマークだったようで、40位にも入っていませんでした」
大ヒットが期待されたものの、コロナ禍によって冷や水を浴びせられた商品やサービス。2021年のリベンジを期待したい。