実は全員日本人、仕掛け人は「餅ゴリ」…5分でわかる「NiziU」カンタン講座

 東京スカイツリーが「虹色」にライティングされたのは12月2日のこと。“彼女たち”の出陣を祝うための大々的なPRである。この正式デビューのなんと16日前に史上最速の紅白出場をいとも簡単に決めた、異例のガールズグループ。彼女たちは何者なのか。口がポカンのお父さんにもわかりやすく、教えてあげましょう。

「NiziU」と書いて「ニジュー」と読む。日本の「ソニーミュージック」と韓国の「JYPエンターテインメント」との日韓合同オーディションプロジェクト「Nizi project」(以下、虹プロ)によって約1万人から選ばれた9人組のガールズグループだ。9人とも日本人だが、プロデュースしているのは韓国人だ。K-pop事情に詳しいライターの鈴木妄想氏が解説する。

「日本8都市にハワイ、LAを加えた10カ所で地域予選が開催され、東京合宿、韓国合宿を経て最終的に9名が選ばれました。その様子はHuluで詳細に配信され、デビュー前の6月30日に発売したプレデビュー曲『Make you happy』のMVは、縄跳びの動きを模した誰でもマネしやすいダンスがウケて、約2億回再生。なんと全世界の音楽配信サイトで109冠を達成したんです」

 さらに正式デビュー曲となった「Step and a step」のミュージックビデオは、公開わずか1日で1000万回再生を突破。デビュー当日の時点でCDシングル売り上げ約25万枚を記録し、オリコンデイリーチャート1位を獲得。快進撃の口火を切った。

「音楽業界にとどまらず、各業界が注目していますね。来年1月発売予定のコーセーのコスメ商品の新ミューズ(象徴的な存在)に就任し、12月8日から放送されているロッテ『Fit’s』のCMにも出演しています。流行の波に敏感なスポンサーが、いかに注目しているかがわかります」(スポーツ紙芸能担当記者)

 すでにファッションリーダーの登竜門たる女性ファッション誌「CanCam」や「ViVi」の表紙にも抜擢されている。

 まるで売れることが約束されているかのように順調な「Step and a step」なのである。だからなおのこと、お父さんには人気の秘密がわかりづらいだろう。

 とはいえ、中高年にもその人気の波は少しずつ届いてきているようだ。

「コロナ禍でのデビューは逆風になるどころか、追い風でした。虹プロが配信され始めたのは今年1月から。ちょうど自粛期間とかぶり、Huluなどのサブスク(定額制サービス)を利用する人が増えました。並行して(Huluを放送網傘下に置く日本テレビの)『スッキリ』でも定期的に特集が組まれていた。結果、娘や妻が見ているからと、一緒に見ていくうちにファンになった中高年男性も多いようです」(鈴木氏)

 さらには、感情移入できるオーディション形式の番組だったことも、人気を後押しした。音楽番組スタッフが語る。

「オーディションを通して彼女たちが切磋琢磨しながら時に喜んだり涙を流して成長する姿は、自分の娘を応援しているかのような気分になる。かつて『モーニング娘。』などを輩出して一世を風靡した『ASAYAN』(テレビ東京系)のようで、日本人が入り込みやすいテイストになっています」

 まだわかりづらければ、そもそもに立ち返ろう。いわばNiziUは韓国からの逆輸入だ。およそ10年前、KARAや少女時代など、K-POPグループが日本を席捲した時代があった。

 長年、韓国の音楽業界に精通している、タレントのローバー・美々が説明する。

「韓国のアイドルたちは、日本のアイドルに比べてパフォーマンスのクオリティーが高いんです。デビューするまでは『練習生』といって、所属事務所が管理する寮生活。かつてマイケル・ジャクソンを教えていたような先生などからレベルの高いレッスンを朝から晩まで受け、徹底した食事管理をされます。まさに『完成』した状態でデビューに臨むため、ファンの満足度も高いのでしょう」

 だからこそ、わざわざ韓国に渡ってデビューを目指す女の子たちがいるというわけだ。NiziUにも、JYPエンターテインメントの練習生として所属していたメンバーが3人いる。

「メンバーが全員日本人というのも強みです。かつてのK-POPブームは、日韓関係が悪化して『なぜ日本人じゃないのに紅白に出るんだ!』と反発が起こり、フェードアウトしていった。しかし15年に日韓混成グループのTWICEがデビューし、17年から3年連続で紅白に出場。満を持してK-POPの実力を持った日本人のみのグループが誕生しました。ルックスはおおむね『クラスで5番目ぐらい』という、手が届きそうなところを狙ったといい、どこかで聞いたことがあるような話です」(音楽番組スタッフ)

 日本というマーケットを知り尽くし、計算し尽くしてのデビューであった。

 その仕掛け人が、通称J.Y.Parkなる人物。「Park」などと仰々しいが、本名のパクを伸ばしただけで、48歳の中年男だ。

「自身もアイドルとして活躍していたことのある、20年以上にわたる韓国有数のヒットメーカーです」(ローバー)

 韓国芸能界によくある後ろ暗さを感じさせず、ファンの間では通称「餅ゴリ」(餅が好きなゴリラの意)と呼ばれて親しまれている。いつの時代でも、売れっ子にはそんな参謀役が付いて回るものだ。とはいえ、NiziUの快進撃は一時的では終わらない様子で、

「当初は日本をメインに活躍するでしょうが、すでにアメリカで人気を博しているBTS(韓国の男性ヒップホップグループ)のように、世界を視野に入れているようです」(鈴木氏)

 今のうちに9人の名前を覚えておけば、時代に乗り遅れないだろう。

エンタメ