テレワークやオンライン学習の機会が増えると同時に、家庭のIT化が進む一方、なぜかペーパーレスの波に逆行するかのように家庭用プリンターが売れている。
「エプソンでは、10月末に20年度のプリンター販売台数を急遽40万台増やして1000万台として大容量インクジェットプリンターの生産能力を引き上げるとしました。アジア新興国での需要も回復したことも緊急増産に影響しているようです」(経済ジャーナリスト)
大手メーカーの調査でも、今年3〜5月の3カ月間で同社の家庭用プリンターの購入動機として「仕事用」と答えた人が約40%で、その前の3カ月間に比べて15%も上昇したという。
正直、プリンターはあってもせいぜい使うのは年賀状を印刷するくらい。そんな家庭は多かったはずだ。ところがコロナでリモート化が進み、家庭が職場・学習の場となった。
これまでのIT化はスマホへの機能集約が進んできたが、結局は移動体端末に過ぎない。外出先で使用するには便利だが、そもそも移動しないのだから、それなら家でゆっくりと目を通しやすい紙がいい。そういった需要が増えているのだ。だから、インクの買い替えが少なくて済む低コストの大容量インクジェットプリンターが売れているというわけだ。
「一部の学習塾では、授業そのものはオンラインでも、課題を紙にプリントアウトして、スキャンして提出するという形態が増えています。コンビニでもプリントできますが、やはり自宅でプリントできるのに越したことはありませんからね。自宅内でも自由に移動できるノートパソコンやウェブカメラといったパソコンもしくはパソコン関連商品が売れているだけでなく、デスクや椅子、文房具、休憩するためのリラックス器具なども売れ行き好調です」(前出・経済ジャーナリスト)
生活の変容で何が売れるかわからないものだ。
(猫間滋)