義勇、蜜璃、凪…「鬼滅ネーム」をつけられた子どもは何歳から改名できる?

 言わずと知れたアニメ「鬼滅の刃」の大ブームによって、親が新生児につける名前に大きな変化があらわれている。

 毎年、赤ん坊の名前に関する調査を実施している「ベビーカレンダー」によれば、今年は「義勇(ぎゆう)」や「蜜璃(みつり)」、「凪(なぎ、なぎさ)」など「鬼滅の刃」に登場するキャラクターや技の名前がランクイン。いわゆる“鬼滅ネーム”がブームになりつつあるという。

「一昔前は『昊空(そら)』『心愛(ここあ)』『泡姫(ありえる)』などキラキラネームが流行りましたが、4~5年ほど前からは男子は『〇男』『〇郎』、女子なら『〇子』『〇美』といった古風な名前(シワシワネーム)が密かな人気となっており、『鬼滅の刃』によってさらにその傾向が強まっています。世間一般的にはキラキラネームに対して批判的な意見も見られましたが、今回の“鬼滅ネーム”も賛否あるようです。キラキラネームと比べたらだいぶ良くなったという意見や、アニメのキャラを子どもにつけるのはいかがなものかという意見も。昔から大ヒットした映画やドラマ、アニメなどのキャラクターの名前を自分の子どもにつける親は珍しくありませんでしたが、いつの時代も批判的な声は一定数ありましたからね」(人名の変遷などに詳しい研究者)

 こうして名前をつけられた子どもの中には、大人になって改名を希望するケースも珍しくない。日本では毎年改名を希望する人が4000人以上にのぼるといわれており、実際にキラキラネームを別の名前に変更した事例も。その最たる例として、親から「王子様」さんと名付けられた男性(当時18歳)が、2019年に「肇」(はじめ)さんに改名したことが話題になった。

 特定の恐れがあることから本人の希望で本名は伏せるが、キラキラネームを持って生まれた男子(17歳)は、これまでの苦労をこう振り返る。

「もしかすると今流行りのシワシワネームや鬼滅ネームをつけられた子どもの中には、将来名前のせいで苦労や嫌な思いをする子も出てくるかもしれませんが、僕に言わせればキラキラネームよりかは断然マシ。なぜなら、シワシワネームは自分の親やその前の世代にたくさんいる名前だし、“鬼滅ネーム”の義勇(ぎゆう)や蜜璃(みつり)などは初見でも一応読むことができるからです。キラキラネームは初見だと一発では絶対に読まれないし、日本の歴史の中で完全に浮いてしまっている名前です…。僕自身もこれまで名前のせいで特に上の世代の人から変な目で見られたことも多々ありましたし、精神的な負担から自死が頭に浮かんだことも…。調べたところ、15歳以上なら親の同意なしにでも改名の申請はできるし、また改名するには相応の理由も必要ですが、キラキラネームは審査が通りやすいということも知っています。でも、さすがにこれまで育ててもらった親に内緒という訳にもいかず、以前両親に相談してみましたが大反対されて母親なんて泣き出す始末でした」

 彼は、高校卒業後に就職し、経済的に自立したらすぐに改名を申し立てる予定だという。一方で、子どもにキラキラネームをつけたという親はこう話す。

「息子に個性のある名前をつけたかった。名前は人が一生背負っていくものだから、社会的にも人間的にも輝く唯一無二の存在になってほしいという思いがあった。流行っているシワシワネームのほとんどは昔ならごくありふれた名前だったし、“鬼滅ネーム”も子どもが大きくなって名前の由来を訊かれたときにまさか『人気アニメから拝借した』とは言えないだろう(笑)」

 名前を背負っていくのは親ではなく子どもだ。親は子に対して、のちのちきちんと説明責任が果たせるよう、よく吟味して名前を授けるべきかもしれない。

(橋爪けいすけ)

ライフ