競技会に出場する女性アスリートに対して、そのパフォーマンスを撮影する目的ではなく、いわゆる”男性目線”で選手の姿を狙う「盗み撮り」まがいの行為が後を絶たない。しかも、撮影された画像や動画はSNSにアップされて拡散。結果、ネット上で半永久的に漂う「デジタルタトゥー」として選手を苦しめている。
そんな非常識な投稿被害に苦しむ女性アスリートたちの声を受け、10月13日、日本オリンピック委員会(JOC)がようやく重い腰を上げ、「性的画像」の対策に乗り出すことを明らかにした。
スポーツジャーナリストが言う。
「今年8月、複数の女子陸上選手から日本陸上競技連盟に対し、被害相談があったことが直接的なきっかけですが、かねてから水泳、新体操、ビーチバレー、フィギュアスケートなど、肌の露出が多いスポーツは盗み撮りのターゲットになりやすかった。ところが、最近は圧倒的に陸上競技が狙われるようになったんですね。競技場にはさまざまな選手が一同に集まりやすい上、スタジアムも広いことで怪しまれずに撮影することができるのため、その手の輩にとっては、ロケーション、セキュリティーともに”理想的な環境”ということのようです」
さらに、陸上が注目されるようになった背景について、「露出度の高い競技ユニフォームに理由がある」と語るのはスポーツ紙のカメラマンだ。
「陸上と言えば、かつてはランニングシャツにランニングパンツ、というスタイルが定番でしたが、女性は胸のふくらみがあるため、『その下にできる空間の空気抵抗を減らす』という目的でセパレートタイプのユニフォームが誕生し、それが世界のトップアスリートたちに愛用されるようになりました。すると、そのスタイルが『速い』ではなく『かっこいい』となり、そんな風潮が学生などジュニア世代にまで浸透するようになってしまった。正直、中高生レベルではセパレートタイプのユニフォームを着用する必要はないのですが、いまやそれがスタンダードになりつつあり、結果、そんな女子選手たちをファインダー越しに狙う輩が急増してしまったというわけなんです」
しかも、カメラの機能がアップしたことで、指先サイズの超小型カメラや、腕時計、メガネの中に仕込まれたカメラでも、鮮明な映像や動画が撮れるようになったことも「盗み撮り」急増の大きな要因なのだという。
とはいえ、被害を心配して競技に集中できなかったり、望まない形で競技画像がアップされたりと、精神的ダメージを受けた女性アスリートは少なくない。では、そんな女子アスリートの声に対し、JOCは具体的にどんな策を講じるのだろうか。
「実際、現在も大会によっては主催者が競技場へのカメラ持ち込みを登録制にしたり、撮影禁止エリアを設けるなど対応はしていますが、望遠レンズを用いれば撮影は可能ですからね。しかも、カメラを構えている人間が、関係者や親族なのか犯罪者なのか、それが性的な意図による盗み撮りなのか、といった明確な線引きが難しく、仮に不審者を見つけても、現状では撮影を取り締まるような法律はありません。JOCとしても具体的な対策案に苦慮しているということです」
一部では「報道以外のカメラ撮影を禁止すればいいのでは」という声も上がっているようだが、そうなれば家族やチーム関係者から抗議が起こることは必至。いずれにせよ、アスリートと盗み撮りをめぐるイタチごっこは当分続きそうだ。
(灯倫太郎)