100万円でヘッドフォンが!? 川崎市「ふるさと返礼品」に見る財政流出の危機感

 高級ヘッドフォン100万円、ホテルのスイートルーム宿泊券30万円。

 これ、神奈川県川崎市のふるさと納税の返礼品だ。返礼品の過度の大盤振る舞いには、総務省が一部の自治体に待ったをかけるひと悶着があったが、再び高級化に戻るのか。

「ふるさと納税によって流出している市税は、本来は、私たち川崎市民のために使われる貴重な財源です」

 川崎市はこの7月にも市のホームページにこう記して、ふるさと納税に絡んで財政の窮状を訴えかけていた。

「ふるさと納税では、生まれ故郷など(故郷に関わらず)応援したい自治体に寄付ができる制度。手続きをすると所得税の還付や住民税の控除が受けられるので、勢い、もらってうれしい返礼品を用意した自治体に人気・寄付が集まるようになります。すると、本来入るべき自治体に入る税収が入らなくなる。そして川崎市の場合、この市税の流出によって平成27年度は2億円が減収し、令和2年度にはその額は63億円にも上るとされています」(地方紙記者)

 川崎市が焦らないはずがない。従来、川崎市はふるさと納税の高級化路線には否定的だったが、昨年は地元Jリーグの川崎フロンターレの限定グッズなどで工夫をこらしたが、さらにこの10月1日に返礼品をリニューアル。冒頭のヘッドフォン、スイートルーム宿泊券のほか49品を追加、昨年までの最高額の高級ワイン(27万5000円)を一気にブチ抜いた形だ。

 もちろん背景には前述の総務省と自治体の闘いがある。ふるさと納税の高級化の象徴的存在だった、大阪泉佐野市が総務省の「指導」に対し訴訟に踏み切り、法廷闘争は最高裁までもつれた。結果は泉佐野市の逆転勝訴。疲弊する地方の実情を理解しないままふるさと納税をスタートさせ、過熱化したら待ったをかけたが、それを裁判所に否定されるという中央官庁のチョンボによって、結果的にはふるさと納税の高額化にお墨付きが与えられた格好になる。

「昨年度は横浜市が131億円で、流出額では全国最多でしたが、横浜市の場合は国から地方交付税で補填される自治体なので、流出分の75%が補填されます。ところが川崎市は不交付の扱いなので、実質的には川崎市が流出額で全国1位になっていました」(前出・地方紙記者)

 泉佐野市の訴訟では、判決文に「節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」との一文が盛り込まれていたものの、背に腹はかえられない窮状がそうさせているのも事実だ。

(猫間滋)

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