石破総理肝いり「地方創成2.0」が崩れ去る…コメ不足⇒ふるさと納税返礼で自治体悲鳴

 コメ高騰に伴う「令和のコメ騒動」が一向に収まる気配を見せない。政府が備蓄米を放出するも効果は限定的で、現在も5キロ4000円台の高値が続いている。この影響は、移住者誘致で全国的に注目を集める茨城県境町のような地方自治体にも、暗い影を落としつつある。

 ある不動産関係者は語る。

「境町は茨城県西部、埼玉県・千葉県との県境に位置し、人口約2万4000人の小さな町ですが、全国的な知名度を誇っています。特に話題なのが、新築住宅に子育て世代が月額5万円台~6万円台で25年間定住すれば、その家を無償譲渡するという制度。この制度には国内外から移住希望者が殺到しています」

 2024年1月発売の「田舎暮らしの本」(宝島社)による「移住者増加・人気の町ランキング」では、同町が堂々の1位に。実際、昨年は人口が67人増加し、7年ぶりにプラスへと転じた。

 茨城県の関係者はこう続ける。

「住宅支援だけでなく、子育て世代を惹きつけているのが教育施策です。各小中学校に複数のALT(外国語指導助手)を常駐させ、休み時間なども含めて日常的に英語に触れられる環境を整えています。その結果、中学3年生の英検3級以上の取得率は約52%にも達しているんです」

 さらに、境町には日本屈指のアーバンスポ―ツ施設や自動運転バス、世界的建築家・隈研吾氏が設計した美術館など、次々と先進的な施策が導入され、全国から視察が相次いでいる。

 しかし、そんな“イケイケ”の境町に暗雲をもたらしているのが、コメ騒動である。

 経営コンサルタントは指摘する。

「境町は全国でも先進的な施策を数多く実行している注目自治体ですが、その裏付けとなっているのが『ふるさと納税』の寄附額です。一昨年の受入額は約99億円で全国11位。その大きな原動力となってきたのが、境町の誇る“旨いコメ”でした。ところが、米不足により昨年の寄附額は4割減の54億円にまで落ち込んでしまった。この影響は今年も継続する見通しで、町政全体に深刻なダメージを与える可能性があります」

 境町だけではない。コメの高騰・品薄によって「ふるさと納税」に大きな影響を受けている自治体は全国に存在する。同じ茨城県の坂東市では、コメの在庫を上回る寄附申し込みが殺到し、返礼品の発送ができないトラブルに発展。また、北海道や新潟県などの米どころでも、コメ返礼品の受付停止が相次ぎ、混乱は拡大している。

 政府の対応の遅れは、地方の重要な財源さえも脅かしつつある。石破政権の掲げる看板政策「地方創成2.0」は、いまや風前の灯と化している。

(田村建光)

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