中国で不動産バブルが破綻したことは世界に知れわたっている。だが、その先にすさまじい暗澹たる社会が待ち受けていることを想像する人がどれだけいるだろうか。
僅か10カ月前まで、コロナ禍が終息すれば中国経済はV字回復するという楽観論が世界の標準的考えだった。しかし、ゼロコロナ政策を撤廃しても経済回復は困難を極め、未曽有の不況に陥ったままだ。
2023年7月、中国国家統計局は16~24歳の若者の失業率が21.3%と過去最悪水準にあることを発表した。だがその直後、中国人の学者が実質失業率は50%に達していると明らかにすると、8月以降、国家統計局は失業率公表の一時中止に追い込まれた。
これは、中国の経済状況が予想以上に悪化していることを示す確かな証しである。
今年に入ると習近平主席と李強首相は相次いで、「内循環」による経済回復を目指すと繰り返し唱えてきた。要するに、外需は米国の中国企業への経済制裁で期待できないので「内需」を刺激して経済回復を実現しようというわけだ。
しかし、肝心の雇用創出に貢献する中小企業がバタバタ倒産していて、その累計は400万社を超えているという。国内経済の牽引車であるはずの企業がこの状況では経済回復などできようはずがない。加えて、不動産会社が発行したドル建て債券のほとんどがデフォルトになっているのだ。
参考までに、日本の不動産バブルが弾けた30年前を振り返ってみよう。バブル崩壊で地価下落が始まると、最初に銀行の別動体だった不動産担保融資のノンバンク「住専(住宅金融専門会社)」が破綻した。その莫大な不良債権が都市銀行に及び、その処理に公的資金が注入され、金融機関の再編にまで進んだことはよく知られたことだ。
こうした事態を端緒に、現在まで「失われた30年」と言われるデフレ社会が続いている。
ところが、中国がいま経験していることは日本の比ではない。中国の人口は約14億人。そこに不動産バブルに乗って建設されたマンション(工事が中断している物件も含め)17億戸とも伝えられている。中国の不動産事情を知れば、その深刻さがよくわかるはずだ。
中国は全ての土地が国有地なので、これを管理する地方政府が開発会社に借地権を売り、財源にしてきた。地方政府が直接債権を発行することはできないため、傘下に「融資平台」という機関を作り、そこを通じて資金調達し、莫大な公共投資を行ってきた。それが不動産ブームの牽引車となり、結果的に地方政府の負債を不動産会社並みに膨らませているのだ。
そんな融資平台が中国全土に約1万もあることを想像してほしい。つまり、不動産バブルの破綻は地方政府の破綻に直結することであり、それはやがて国有銀行と中国政府の屋台骨を揺るがすことになるだろう。そして前述した暗澹たる社会に繋がるのだ。
日本のバブル崩壊では、大手都市銀行は統合・
その理由は、地方政府が融資平台の破綻で財政困難に陥り、年金など社会保険が支払えなくなるためだ。ローンの重荷を背負って喘いでいる人々が、年金まで失ったらどうなるか。生活どころか生命を直撃するのは必至である。
(団勇人・ジャーナリスト)