さらに高齢者が被害の中心を占めるキャッシュカード詐欺やアポ電が横行する一方、新元号に便乗した古典的な悪徳商法も復活の兆しを示しつつある。
代表的なのは「天皇退位」に関連づけた怪しい記念商品の売買に関するトラブルだ。社会部記者が説明する。
「『押し売り』の被害は、16年8月に天皇陛下が退位の意向をにじませるビデオメッセージを公表した直後から始まっています。『記念の写真集を買わないか』と電話をかけたり、いきなり自宅に写真集を送りつけ、後日、電話で金を請求することも。お年寄りなら気づかないだろうと、写真集はネットから盗んだ写真をカラーコピーしてまとめた程度の粗悪品ばかり。それを3万円前後で売るという悪質さです。他にも令和元年の記念コインだとうたって、『数十年後には価値が上がる』と高値で売りつけたり、もっとひどいものでは、段ボールを円形にくりぬき、白い布に赤いスプレーを吹きつけて、日本国旗だと吹っかけるケースもあると聞きました」
業者などを名乗って電話をかけて住所を聞き出し、勝手に代引き荷物を送りつけるという詐欺もある。多田氏が説明する。
「受け取り先の本人ではなく家族が受け取った場合、『誰かが頼んだのかな?』と思ってお金を払ってしまうのはよくあるケース。誰も頼んでいないことに気づき、記載されている番号に電話をかけてもつながらないのです。相手の業者と連絡が取れなければ消費者センターに相談してもお金は戻ってきません。電話がつながったとしても、『買うと言った』『言ってない』の押し問答になり、怒声を浴びせられ怖くなりお金を払ってしまうケースもあった。身に覚えのない代引き荷物は受け取らず、一度持ち帰ってもらい、家族に確認するようにしましょう。また代引きではない荷物の中に請求書が入っている場合は支払う前に消費者センターに相談してください」
だが、こうした送りつけ詐欺や代引き商法のターゲットには、ある「共通点」があるというのだ。多田氏によれば、
「自宅に無料サンプルやダイレクトメールが大量に届く家庭は注意したほうがいいでしょう。つまり個人情報が悪徳業者を含むさまざまな人たちにバラまかれている可能性があるからです。近年、通信販売での買い物やサンプルの注文など、住所や電話番号を教える機会が格段に増えています。その会社がちゃんとした業者なら問題ないのですが、必ずしもそうではない。個人情報が漏れている可能性があることを、ある程度は覚悟しておいたほうがいいでしょう。いつ詐欺の被害にあうかわからないと頭にとどめておくだけでだまされる確率は下がります」