一部では「西暦に統一したら」との声も上がっていた新元号。4月1日の発表以降、そのフィーバーぶりはとどまることを知らない。中でも裏ビジネスの世界では、アノ手コノ手で庶民の虎の子の金を強奪しようとするヤカラがあとを絶たないのだ─。
新元号に日本中が沸き立つ中、虎視眈々と庶民の財布を狙っているのは、裏ビジネスの魑魅魍魎たちだ。中でも「新元号」をかたったキャッシュカード詐欺被害があとを絶たない。社会部記者が語る。
「新元号の発表当日の4月1日、埼玉県に住む80代の女性が、キャッシュカード詐欺にあい、現金100万円をだまし取られるという事件があった。被害者は『元号が変わるためカードを新しくしたほうがいい』という言葉を信じてしまったようです」
被害者の女性は、市の職員や銀行職員を名乗った男から何度も電話があり、カードを変えるよう勧められた。そして自宅に来た男にキャッシュカード3枚を手渡し、暗証番号を教えてしまったという。
また、宮城県でも「キャッシュカードが使えなくなる」と言われ、犯人にカードを渡してしまったケースも報告されるなど、被害は全国に拡大する一途だ。
「だまされた!『だましのプロ』の心理戦術を見抜く本」(方丈社)などの著書で詐欺・悪徳商法に警鐘を鳴らすジャーナリストの多田文明氏が、新元号詐欺の実態を語る。
「今、最も多発しているのが、キャッシュカードをだまし取る詐欺です。銀行や市の職員を名乗って電話をかけ、さまざまな理由をつけて『キャッシュカードが使えない』と追い込むのです。それこそ4月中ならば『新元号に変わる前に』となり、5月に入れば『令和になったため』というように、新元号を絡めた文言はいくらでも考えられます。さらに、今の時期に多いのが還付金を絡めた詐欺。例えば『医療費の払い戻しをしたいが、キャッシュカードが新元号に対応していないため支払えない』と相手に迫るのです」
冒頭のキャッシュカード詐欺のように「新元号」というキーワードに加え、「新年度」「還付金」などといった詐欺の常套句を組み合わせることで、相手方を信じ込ませることがより容易になるという。つまり、新元号で盛り上がるこのタイミングこそが、詐欺師にとっては書き入れ時だというのだ。
また、個人宅に郵送で「新元号によるキャッシュカード変更の手続き」などと書かれた書類と返信用封筒が送られてくるケースもある。書類には暗証番号の記載欄があり、カードも同封して返信するよう記されている。
実際に、新元号への変更手続きを必要とされている会社や業種も多数あるため、「ウソではない」と信じてしまうようだ。まさに詐欺グループの思うツボなのである。