さらに、80代の女性が殺害され、3人の犯行グループが逮捕されたことも記憶に新しい「アポ電(アポイント電話)詐欺」でも、新元号を悪用するケースが目立っている。
「多いのがNHKやマスコミを名乗ったニセアンケート調査です。テーマとなるアンケートに答えていく中で、個人情報や資産状況まで把握されてしまい、その後、詐欺の被害だけでなく、ひどいケースでは強盗にあってしまうことも。『新元号の令和についてどう思いますか?』なんて聞かれたら答えてしまいますよね。かなり増えるのではないかと危惧しています」(多田氏)
実際、大手マスコミなどでは、ランダムに電話をかけて受話器を取ると、テープの音声が流れる「電話アンケート」が頻繁に実施されており、元号についてもすでに行われているだけに、高齢者ならずとも注意が必要だ。
「ニセアンケート調査」では、こんな感じのやり取りが繰り広げられる。ひととおり元号に関する設問を終えると、
「なるほど、貴重なご意見ありがとうございました。今おいくつですか?」
─○○歳です
「ご自宅に家族で暮らされているんですか?」
─夫婦二人暮らしです。
「そうですか、住んでいる地域は、どちらですか?」
─××県です。
「ちなみに何市ですか?」
─△△市です。
「ああ、そうでしたか。実は今、タンス預金の調査もしているのですが、資産状況を聞いてもいいですか」‥‥などと、話の流れで名前、住所、携帯番号、預金額まで聞き出されてしまうのだ。
これはあくまで一例だが、アポ電のマニュアルは日々更新されているだけに、我々が思うよりもかなり巧妙なやり取りから、犯罪者は相手の個人情報を引き出してしまうのだ。
「実際にマスコミ関係のアンケート調査も行われているため、見極めが非常に難しい。感想は言ってもいいけれど、家族状況やお金の話は聞かれても答えないことです。そもそも、アンケートに答えることも義務ではありません。ただ、高齢者の中には特に真面目な方が多く、平成や令和への思いも強いので、答えてしまう傾向があるのでしょう」(多田氏)
警察当局や電話キャリア各社も注意喚起しているが、被害は一向に減る気配はない。詐欺グループとのイタチごっこはまだまだ続く。