「改元詐欺」騙しの手口を全公開(4)架空請求サイトも「新元号」仕様

 一方、スマートフォンやパソコンを用いたフィッシング詐欺やワンクリック詐欺にも新元号の波が押し寄せてきている。すでに、携帯電話各社を名乗ったメール被害も確認されているだけに、パソコンやスマホユーザーは注意したほうがよさそうだ。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が赤信号を点滅させる。

「ウェブサイトに本人確認として、クレジットカードや免許証などの情報を登録していることがあると思います。銀行やショッピングサイトなどの大手を名乗って『新元号になったため再確認したい』と個人情報の提示を求められ、そのまま情報を盗まれるということがあるかもしれません」

 クリックすることでウイルス感染してスマートフォンが乗っ取られ、プリペイドカードなどを購入されてしまうこともあるという。

 また、同様の手口で出会い系サイト、アダルト動画サイトを名乗った架空請求も急増する可能性が高い。

「アダルトサイトを名乗ったぼったくり詐欺の相場が10万〜15万円から3万〜5万円に下がっています。人に相談しにくく、お小遣いでもなんとかなってしまう金額のため、払う人が増えています。1回払ってしまうと、名前や電話番号、メールアドレス、パスワードなどの情報が相手に伝わり、『あなたのパスワードをハッキングしました』などとしつこく架空請求の連絡がくることに。とにかくクリックしない、お金を支払わない、誰かに相談することです」(井上氏)

 新元号の発表に便乗し、「転売ヤー」たちも関連グッズで一儲けしようと商魂を発揮していた。10年以上、転売事情の取材を続けるライター・吉岡幸二氏が話す。

「まず目をつけたのは、号外です。JR新橋駅前で配布されることがわかっていたので、転売目的で手に入れようとする人が集まり、一時パニックが起きるほど奪い合いが起きました。フリマアプリ『メルカリ』やオークションサイトでは、各新聞社の号外が一斉に売られ、2万円の価格を提示する出品者もいて、お祭り騒ぎに。でもだいぶ売れ残っていて、価格も500円前後で落ち着いています」

 中には、どこで手に入れたのか、令和の発表を伝える4月2日の新聞150部を束(即決15万円)で売りに出す「業者」も現れる始末。

 企業の限定品もまた転売ヤーたちに狙われていた。森永製菓のチューイングキャンディー「〝号外〟ハイチュウ」や日本コカ・コーラの炭酸飲料「〝令和〟コカ・コーラ」が都内で無料配布されると、あっという間になくなったのだ。

「オークションサイトで号外ハイチュウは2000〜3000円。コーラは1万円台で販売されています。限定品で出回っている本数も多くないので、この先、値段が上がると見られています」(吉岡氏)

 一方、「メルカリ」では、出品者が色紙や半紙に書いたと思われる「令和」という文字が意外な売れ筋商品となっていた。

「仲間内のパーティーなどで使う小道具用に購入する人が多かったんです。自分で書けばいいと思うのですが、わざわざ書道の道具をそろえて書くのも面倒だということで、500円前後で売れていきました」(吉岡氏)

 ITビジネスでは、令和のドメイン(ネット上の住所)取得合戦も激化している。ホームページやメールのアドレスに使うことができるため、転売ヤーが殺到。新元号が発表された直後から、ドメイン登録サイトでは「reiwa」単独の文字がついたドメインはすぐに売り切れたという。

「ドメインを登録する時の手数料は通常であれば、数千円程度で済みます。語呂がいいドメインを取得できたら、転売ヤーはその権利を譲渡するため、ネットオークションに出品。入手困難であることをうたい文句にして、600万円台で販売する者も出て高騰を続けています」(吉岡氏)

 まさに「新元号」で一攫千金を狙う怪しい面々はますます今後、活発にバッコする勢いなのだ。多田氏はこう分析する。

「平成元年を迎えた頃は、天皇崩御で国民皆が喪に服す自粛ムードでした。一方、平成から令和に変わる今回は新時代の幕開けといったお祝いムード一色。大手企業も記念セールなどを行い、財布のひもも緩みやすくなっている。詐欺師たちにとって絶好のチャンスであると言えます」

 新元号ブームを終えると2020年の東京オリンピックが待っている。増大する怪しいビジネスをのさばらせておいてはならない。

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