新型コロナウイルスの感染拡大に終わりが見えない中、リモートワークでイヤホンを長時間使用することにより、外耳炎を発症するケースが急増しているという。
都内のデザイン事務所に勤めるAさん(43歳・男性)が、耳に突然異変を感じるようになったのは7月初めのことだ。
「コロナ禍の影響で5月の連休明けから完全な在宅勤務になり、会議だけでなく、上司や部下との細かい打ち合わせも、すべてリモート。おかげで1日10時間くらいイヤホンを付けっぱなしの日もあり、気になるのでついつい綿棒で触る機会が増えてしまって。それでも最初は耳の穴のまわりが痒い程度で、それが次第に痛みに代わって、ついには耳の穴が真っ赤に腫れあがり、痛くてイヤホンが入れられない状態になってしまったんです」
慌てたAさんは、すぐに耳鼻科を受診。すると、医師から告げられた病名が「外耳炎」だったという。
一般社団法人「日本耳鼻咽喉科学会」の公式サイトによれば、「外耳炎」とは、鼓膜の手前にある「外耳」の炎症のことで、耳かきや指の爪などで耳の中をこすった際に傷ができることで、傷口から雑菌が入り、それが原因で炎症を引き起こすとされる。だが、こうした傷だけが原因とは限らないようで……。
「耳の穴にイヤホンを入れて長時間使うことで、皮膚が炎症を起こして、結果外耳炎になってしまうというケースも増えているようです。しかも痛くても仕事だからイヤホンを外せない、と、この状態を放置しておくと、細菌に感染して患部が膿んでしまったり、耳の穴の腫れがひどくなると最悪ふさがってしまう。一時的な難聴になることもあるので、たかが外耳炎と侮ってはいけない疾患なんです」(医療ジャーナリスト)
実は、ここ数カ月でAさんのように「リモートが原因の外耳炎では?」というケースが右肩上がりで増えており、SNS上でも、《在宅でのイヤホン生活のせいで耳から膿みが出た!?》《仕事で1日10時間イヤホンしていたら、穴が真っ赤にはれ上がってイヤホン入らなくなった〜》といった投稿が急増。17日には「外耳炎」が、トレンドの上位にランクインされることに。
前出のジャーナリストによれば、予防法としては、「当然のことですが、長時間耳にイヤホンを入れっぱなしにしないことが一番。また、耳に触れる部分を清潔に保つ。あるいは、スピーカーを使い耳への負担を和らげるなどの方法があります。ただ、外耳炎を放置していたことで、カビに感染(外耳道真菌症)し、外耳炎がより治りにくくなるケースもあるため、そうならないためにも、局所に痛みやかゆみが出たら迷わず耳鼻科を訪れるべきです。治療としては、患部の洗浄、抗真菌薬の塗布となりますが、とにかく局部を清潔にすること。それが最も重要になる」とのこと。
イヤホンによる「外耳炎」が増えていることに加え、在宅勤務でスマホやパソコンを直視する時間が増えたことで、「パソコン老眼」「スマホ老眼」なる疾患も急増していると聞く。
なるほど、新しい生活様式には、新しい病気や疾患が潜んでいるようだ。
(灯倫太郎)