「同意できない」「これまでの議論は何だったのか」
9月17日、日本民間放送連盟(民放連)の大久保好男会長(日本テレビ放送網会長)が定例記者会見の場で怒りを露わにした。NHKがインターネット業務の種類や内容などを定めた基準で、費用は「受信料収入の2.5%以内」とする現行の取り決めを撤廃する改正案を示したからだ。
「テレビにひも付いている受信料を放送以外に使うのは一定の制約があって当然だ」
と、かなりのおかんむりなのだ。
「火種はすでに10日に燻っていました。NHKの前田晃伸会長はやはりこの日の定例記者会見で、番組同時配信などのネット事業はあくまで放送を補完する『任意業務』とされていることに対し、『本来業務の位置づけが合っており、合理的だ』と発言していたからです。この方針を巡って民放連が反発する事態に発展することはほぼ必至と見られていたんです」(全国紙記者)
そして15日に出てきた改正案は、前田会長の考え方がそのまま反映されたものだった。現行の2.5%上限が撤廃され、今後3年間で0.4%積み増しの2.9%まで拡大するというものだったのだ。
民放連が怒るのも無理はない。現行の2.5%上限のルールが定められてまだ1年しか経っていない。そもそも2.5%上限というのも、7000憶円という巨額な受信料を背景に、放送以外のネット事業で民間放送の民業を圧迫しないための抑制的な予算組みの指標として、民放連とも議論を重ねた上で定められたものだ。それを1年で“反故”にするというのだから、「これまでの議論は何だったのか」との言葉が出るのは至って自然な感情と言える。
NHKサイドとしては、2021年度予算が2.5%の上限を超えるのは、上限の枠外として計上していた東京五輪・パラリンピックの費用を合算したためとの方便を述べているが、一方で、22年度も同程度の予算が予定されているので、結局は事実上の上限撤廃の改正案を示したことになる。やはり民放連としては納得がいかない。
さて、このガチバトルを最終的に裁くのはもちろん総務省の意向だ。直前まで総務大臣だった高市早苗・前総務大臣はこのNHKの方針に慎重な姿勢を示していた。菅義偉総理が打ち出した携帯電話値下げでも注目が集まる総務省の今後の出方だが、さて武田良太・新大臣はこのNHKと民放連のガチバトルをどう裁くのだろうか。
(猫間滋)