「安倍退陣」でも株価安定!アメリカ“投資の神様”が日本株を支えた理由

「バイ・マイ・アベノミクス」(安倍政権は買いです)

 2013年には海外投資家たちの前でこうスピーチした安倍晋三総理。アベノミクスの3本の矢を掲げ、2度の消費税上げを実施しながらも7年半以上という史上最長期にわたって政権を維持してきた。アベノミクスの功罪はここでは措くとして、企業の利益は増加、高株価を演出し、マーケットから好感を持たれていたことは事実だった。

 だが8月28日午後に「安倍退陣」が明らかになって終焉を迎えるとなると、政局の不安定を毛嫌いしたマーケットは2万3300円辺りで推移していたのが、一時は2万2500円台まで売られる動きを見せた。

 ところが週末に退陣が発表された翌週にはもう株価は回復、9月3日には2万3500円超えで新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまで回復を遂げた。

「1つは『菅官房長官の次期総裁有力』との観測が流れ、さらには正式に総裁選出馬を決めたからです。特に後半の安倍政権では、安倍首相は得意とする外交には積極的だったものの、GoToトラベルが菅さんの一念で断行されたように、経済や内政は菅さんが実質的に運営していたと言ってよく、つまりは今までの路線は堅持されるということで安心感を呼びました」(経済ジャーナリスト)

 つまり利に聡いマーケットでは、政治が安定して市場環境さえ整えば、あれだけ「1強」が謳われた安倍体制でなくとも良いと判断したわけだが、さらに日本株を支えたのがあのアメリカの「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏による“日本買い”だった。

「8月31日にバフェット氏が率いる米投資会社のバークシャー・ハサウェイの子会社が、日本の5大商社の伊藤忠商事、丸紅、三井物産、住友商事、三菱商事の株式をそれぞれ5%以上保有していることが明らかになったのです」(前出・経済ジャーナリスト)

 時間的なシフトで言えば、安倍退陣の政治ショックが、バフェット氏という大物投資家の意向で一気に吹き飛ばされてしまったかっこうだ。

 バフェット氏の投資スタイルは、彼が若いころから常に一貫して「本源的価値を大きく割り込んでいる株に投資する」というもの。つまり、「成長性があっても現在は株価が安い」と見た株を先買いするというもので、しかも、もともと日本株には興味がないと言われていたバフェット氏が動いたということもあって、市場関係者の間では、日本のコロナ後の投資を先導するであろう商社を高く評価してものと見られている。そこで、日本株全体が買われているのだ。

 いずれにせよ、マーケットでは「安倍銘柄」はもはや完全に過去のものとなってしまったようだ。

(猫間滋)

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