上がらない賃金に、最近は平均賃金で韓国にも抜かれたとよく言われる。経済協力開発機構(OECD)の調査で、日本は15年に韓国に抜かれたからだ。そして今度はGDPで、現在の3位から4位に転落する見込みだ。22年に日本は4位のドイツとほぼ同水準のところまで迫られ、早ければ今年にも、遅くとも5年以内には逆転されると見られている。
「日本が当時の西ドイツを抜いてGDPで世界第2位になったのが68年のこと。別格のアメリカを除けば当時はまだ先進国のGDPは団子状態で、その後日本は順調な右肩上がりで集団を抜け出し、09年に中国に並ばれて10年に抜かれるまで約50年間世界第2位の地位を保っていました。ところがバブル後の97年にピークに達した後は完全に伸び悩み、12〜3年にもう1度盛り返すものの、平均値で見ればずっと横ばい状態が続いている状況。まさに『失われた30年』というやつですね」(経済ジャーナリスト)
GDPは国内総生産で、一定期間内に国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計なので、人口が多ければだいたい大きくなりがちだ。だから3.3億人のアメリカや14億人の中国と比べるべくもないのは仕方がないが、1億2000万人いる日本に対し、ドイツは8000万人だ。してみると、1人当たりのGDPでいかに日本がドイツに比べて劣っているかが分かる。生産性が低いのだ。
理由はいくつも考えられ、現在の日本経済が抱える根本問題がそこには横たわっているはずだ。一方、分かりやすいところでは、アベノミクスの〝罪〟は簡単に見出すことができる。
「アベノミクスという言葉は第2次安倍政権の12年から使われ始め、日銀はこれに同調して、13年3月に黒田東彦さんが日銀総裁に就任した直後の4月からいわゆる『異次元の金融緩和』を行います。するとマイナス金利で市場に出回るお金の流通量を増やしたわけですから、円安になって『安い日本』が定着しました。円安は日本の主力である輸出産業にとっては好都合なので、それら企業の業績を後押しした一方、大した努力も無しに儲かるわけですから、イノベーションが生まれにくく、設備投資や人への投資がサボられました。会社も人も『稼ぐ力』が養われなかったのです」(同)
事実、アベノミクスが実施された期間中の成長率は0.41%。数字が如実に示している。
様々な経済指標で落伍しつつある日本。少子高齢化による人口減やその原因となる首都圏一極集中など、喫緊の課題を憂う声ばかりはあるものの、抜本的対策への道は未だ遠い。
(猫間滋)