依然コロナウイルスの感染拡大が懸念される夜の街では、大幅に減少した客を奪い合う同業者同士の潰し合いが頻発している。コロナに関する様々な根も葉もない憶測や噂のせいで、経営難に陥るクラブやラウンジが後を立たない。「人の噂も七十五日」と言われるが、長く続いた休業要請の影響もあり、やりくりに必死な営業者にとって待ったなしの状況。風評被害に2カ月半もさらされては、廃業へと追い込まれてもおかしくない。
「お盆に入る前頃から、パタッと客足が減りました。『早めに盆休みに入った人が多いのか、お客さん来ないね』なんて従業員とのんきに話していましたが、競合他店が流した、ある噂による風評被害のせいだったのです。懇意にしてくださっていたお客様数名には女の子を通して説明しているのですが、『今はちょっと・・・』と避けられている状況です」
こう語るのは接客クラブのオーナーの男性。盆を過ぎても客足が戻らないことを不思議に思い、常連客の何名かになぜ利用を避けているか尋ねると「コロナが出たと聞いた」と口々に言われたそうだ。
話を突き詰めていくと、同じ繁華街にある他店の従業員らが店ぐるみで「あの店でコロナ陽性の女の子が出た」という事実無根の噂を吹聴していたことが判明したという。夜の街は情報が回るのが早く、同じエリアとなるとあっという間に客の耳に届くことになる。
「感染リスクが高いとされているのはどの店も同じでしょう。そんな中で対策しながら、この難局を乗り切ろうと“夜の街”が一体となって助け合いすべき時ではないでしょうか。今まではうまくお付き合いさせていただいていたと思っていましたが、少ないお客さんを取り合っている状況ではこういった風評トラブルは免れないのかもしれません」(前出・クラブオーナー)
経営悪化が続く夜の街。その水面下では生き残りをかけた泥沼バトルが繰り広げられている。貶められてしまったクラブ嬢の間では「やられたらやり返す、倍返しだ!」と、現在放送中の人気ドラマ「半沢直樹」の台詞を合言葉に競合他店に負けないよう士気を高めているという。この「倍返し」とは、新たな“コロナ風評”による報復なのだろうか…。
しかしながら、他店を蹴落とすことにではなく、このコロナ禍を乗り切ることにエネルギーを使うべきではないだろうか。
(浜野ふみ)