形状が似ていることからギリシャ語の王冠を意味する言葉が由来となっているコロナウイルス。また、デルタ株やラムダ株といった変異種の名称にも同じギリシャ語のアルファベットの呼び名が用いられている。
だが、国内外にそんなウイルスや変異種と同じ名前を持つ企業が複数存在する。世界各地にここまで甚大な被害を及ぼしているだけに風評被害は気になるところだ。
例えば、軽い味わいで飲みやすさが特徴のコロナビールは、メキシコ発の世界的な人気ビールブランド。米国の大手広告会社が昨年2月に発表した調査結果によれば、同国内のビール愛好家の38%が「今は買わない」と回答。販売元のアンハイザー・ブッシュ・インベブ社も昨年1~2月だけで約310億円の売り上げが失われたことを明かしている。
ただし、米国の市場調査会社IRIは、2020年全体のコロナビールの売り上げは前年並みだとしており、風評被害による深刻な業績不振はなんとか回避できたようだ。
そして、石油ストーブや給湯器でおなじみの株式会社コロナも、2月に発表された2021年3月期第3四半期決算によると、主力の暖房機器と空調・家電機器の20年4~12月の売り上げは前年四半期から増加。住宅設備機器は新型コロナウイルス感染拡大の影響から新規受注が減ったことで微減となったようだが、事業全体の売上高は前年同期比2.1%増だ。
あと、現在猛威を振るう変異種と同じ社名のデルタ航空は、昨年1.3兆円の損失を出して11年ぶりの赤字に転落。それでも米国内のワクチン接種が早期に進んだことで国内線を中心に旅客需要がV字回復。4~6月期の3ヶ月だけで720億円の黒字となっている。
「確かに、コロナの影響でこれらの企業名やブランド名のネット上での検索件数が増えたとのデータはあります。でも、それがイコール風評被害につながったわけではない。単に同じ名前ってことくらいみんな知っているということです」(経済ジャーナリスト)
さすがにそんなことでマイナスイメージを持つほど人々は愚かではなかったようだ。