8月4日に突如行われた吉村洋文大阪府知事による「イソジン会見」により、いまだに薬局の店頭では、ポビドンヨード配合のうがい薬が品切れ状態だと言われる。
この会見は昼の情報番組「ミヤネ屋」(読売テレビ)で生中継され、その直後から全国のドラッグストアでは買い占め騒動が起こった。だが、この会見を見て苦笑いしたのが、某大学の研究室で新型コロナウイルス研究に携わる研究者の一人だ。同氏が言う。
「正直、この程度のデータでよく会見まで開いたな、というのが率直な感想です。ポビドンヨードは、ヨウ素の酸化作用を利用した抗微生物成分で、古くから、うがい薬のほか、抜歯治療などに使用されてきたもの。なので、水道水にこれを混ぜてうがいすれば、その時は口の中のウイルスがある程度除去できる可能性はある。しかし、それは一時的なことで、だからといって、それが新型コロナウイルスを死滅させるとは考えづらい。今回の件についてはわかりませんが、最近目立つのが、助成金欲しさから、政府や自治体が喜ぶ研究発表を出す研究者が増えているという事実。なかには、不十分な臨床をもとに『〇〇には効果がある』とぶち上げ、関係のある製薬会社からキックバックをもらったりする輩もいて、これでは、最近問題視される『エセ科学』と何ら変わりがない。さらに、そういった『エセ科学』情報を、ワイドショーに出ている『にわか専門家』が、したり顔でコメントすることで拡散し、それが世の中の混乱に拍車をかけている。悲しいかな、今はそんな状態が続いているんです」
同氏が言う「助成金」とは、日本医療研究開発機構(AMED)を始め、多くの大学が実施している研究者や研究機関への助成のことだが、
「大学の場合は、1研究課題につき最大200万円前後ですが、企業への研究費も助成する日本医療研究開発機構の場合は、ワクチン開発1案件当たり最大20億円、また医療機器・システムなどの研究支援に2億円、治療薬開発に2億円と、桁違いの助成金が出るんです。そのため、助成金を狙って、全く別分野から新型コロナ研究に参入してきた研究者も少なくないと聞きます」(前出・研究者)
研究支援の対象となる期間は、その多くが半年〜1年だという。
「ただ、ワクチンや治療薬の開発との関係がいまひとつ曖昧なものや、どう考えても1年では完了しないだろう、という研究なども採用されていると聞きますからね。そうなれば、今後も、『おやおや?』という不可解な研究結果が発表される可能性は大きいですね」(前出・研究者)
当然のことだが、国からの助成金の原資は税金である。コロナ禍の終息が見えないなか、くれぐれも税金のムダ遣いがないよう、関係各位にはより厳しいチェックをお願いしたいものだ。
(灯倫太郎)