73兆円の経済対策で「GoTo延長」へ、支援事業が「宿泊・飲食」に偏る理由とは?

 感染拡大とそれに伴う自治体の自粛要請で営業時間の短縮を余儀なくされている飲食店。大阪や札幌などの一部地域はGoToキャンペーンの対象外となり、キャンセルが続出。忘年会シーズンなのに予約はなく、廃業する店舗はさらに増えそうな見通しだ。

 しかし、コロナによって深刻な打撃を受けているのは、宿泊・飲食業界だけではない。別の業界からは「GoToキャンペーンやわずかな額でも営業自粛による金銭保証があるだけ恵まれている」と訴える人たちも少なくない。

 大阪市内で服飾工場を営む男性は、「生地は安い中国から仕入れていたが、コロナで輸入できなくなってしまった。だが、アパレル業界には、飲食店のような補償もキャンペーンもない」と嘆く。

 同じく神奈川県内で電子部品の小さな会社を経営する男性も主要部品の一部を中国からの輸入に頼っていたため、業務の一時中断を強いられてしまったという。

「せいぜいあるのは業種に関係なく受けられる助成金や支援制度くらい。飲食店やホテルが苦しいのは理解できるけど、苦しいのは彼らだけじゃない。政府は業績悪化が目に見えてわかるような業界ばかり支援していると思います」

 こうした声に対して、「政府が飲食業界や観光業界に絞って支援しているのは事実」と話すのは政界に詳しいジャーナリストだ。

「コロナ禍で客が減った、売り上げが落ちたとメディアが大きく取り上げたのは、飲食店とホテルなどの宿泊・観光業です。なぜなら景気が目に見える形でわかりますし、映像や記事として伝えやすいからです。そんな業界を支援すれば、ニュースに流れて景気回復のイメージも広がる。そうなれば政権や与党の支持率もアップする。そんな目論みがあったのは当然のことです」

 しかし、GoToキャンペーンを巡ってはトラブル続きで、政府にとって期待どおりの効果が得られているとは言い難い状況だ。

「支援先があまりに一部に集中しています。それでもコロナが感染拡大しなければよかったのですが、現時点では完全な失敗です。今後はGoToの恩恵を受けられない業界もフォローしたり、激務なのにボーナスが減った医療業界への支援も必要でしょうね」(前出・ジャーナリスト)

 12月8日、政府はGoToトラベルの延長などを盛り込んだ73兆円規模の追加経済対策を閣議決定したが、こうした声に応じる姿勢を見せなければ、政治不信はさらに強まりそうだ。

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