2016年のシーズンからリーグ3連覇を達成した“黄金期”は今や見る影もない。8月2日の試合終了時点で最下位に沈んでいる広島。低迷の理由は、どうやらベンチワークと捕手事情にありそうだ。
ドライチ・ルーキーの森下暢仁を先発マウンドに送った巨人3連戦の初戦(7月31日)、広島の“弱点”が露呈した。
1点を追いかける5回、広島の正捕手・會澤翼が頭部直撃の死球を食らい、緊迫感が走った。ぶつけた側の巨人先発の畠世周は即、「危険球退場」となった。
「畠投手は勝ち投手の権利がかかったイニングでした。この頭部へのデッドボールに、実況を担当していた上重聡アナウンサーは、あろうことか『ジャイアンツにアクシデント!』『巨人に想定外の事が』と興奮気味に連呼。いくらホームチームの実況とはいえ、命の危険にもさらされかねない頭部へのデッドボールですからね。さすがに両チームのファンから『曾澤選手を気遣うべき。さすがにこれはないわ』『プロなら言葉を選べよ』と、批判が殺到する事態になりました」(スポーツ紙記者)
會澤は自分の足でベンチへ下がったが、その後の駆け引きで広島は同点に追いつくチャンスを潰してしまったというのだ。
「會澤の治療のため、試合が中断していた時間は、10分ほど。畠は好投していたので、巨人ベンチはリリーフの準備をしていなかったはず。たしかに動揺していたのは巨人側ですが、緊急登板の鍵谷陽平は落ち着いていました」(ベテラン記者)
會澤に代走を送る選択肢もあったはずだ。大事を取るのはもちろんだが、巨人のリリーバーの準備時間を短くする目的で、代走を送るべきだったのかもしれない。まして、次打者は今季復活を遂げた堂林翔太だ。
もっとも、正捕手・會澤を交代させるのは勇気のいる決断だが、こんな指摘も聞かれた。
「広島は7月25日に中村奨成が一軍昇格して以来、『會澤、磯村嘉孝、坂倉将吾、中村奨』の捕手4人体制で試合に臨んでいます。磯村が會澤に代わってスタメンマスクをかぶる試合もありますが、マスクをかぶるのは主にこの2選手でした」(プロ野球解説者)
坂倉、中村奨は主に代打要員と見られる。中村奨はウエスタンリーグ首位打者の打撃成績が評価されての一軍昇格だが、會澤にアクシデントがあった31日に、やっと「プロ2打席目」の代打出場が巡ってきた程度。通常、一軍が試合登録する捕手は3人。選手を出し惜しんでいる感もしないではない。
「坂倉、中村奨の2人に対し、捕手としてはまだ信用していないのかもしれません。會澤に代走を送っていたら、残っている捕手は実質、磯村のみということになるので、佐々岡監督は交代を躊躇ったのかもしれません」(前出・野球解説者)
結局、曾澤が頭部死球を受け、上重アナが「アクシデント」と連呼した“炎上試合”は、そのまま2対1で巨人が逃げ切る形となった。今季の広島が上昇気流に乗れないのは、消極的な選手起用にあるかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)