広島カープのスカウト戦略の勝利と言えそうだ。
3月18日、本拠地・マツダスタジアムで行われたオリックスとのオープン戦で、ドラフト5位ルーキー・河野佳が好投した。1イニングを3者凡退、対外試合5戦に登板し、いまだ防御率ゼロ。「与四球ナシ」の制球力で、新井貴浩監督も「安定感がある。落ち着いているから…」と、試合後に目尻を下げていた。
「開幕一軍は、ほぼ確実。勝ちパターンの継投メンバーに入って来そう」(地元メディア)
「社会人ナンバーワン投手」と評された河野は、「2023年のドラフト1位候補」でもあった。
「昨年7月の都市対抗戦後に病気を患ってしまいました。約1カ月間練習ができず、秋の日本選手権大会は調子がイマイチ。河野は『ドラフト上位指名でなければプロ入りしない』と宣言していました」(アマチュア野球担当記者)
同年は巨人1位の浅野翔吾に代表されるように高校、大学に好選手が多く、全体的に将来性を重視したドラフトとなった。
「都市対抗後に調子を落とさなければ、河野の名前は3巡目までに消えていたと思います」(同前)
「回復を待ってから」と昨季中の指名に二の足を踏む球団もあったという。こうしたドラフト会議の舞台裏の話を聞かされると、「下位指名でも説得できる」と読んだ広島スカウト陣の眼力はさすがだ。しかし、こんな情報も聞かれた。
「河野は広島県・広陵高校の出身です。同校を甲子園に導き、社会人野球でも活躍した投手を他球団に指名されるのはガマンならなかった。河野が社会人に残っていたら、23年ドラフト会議で1位指名の重複も考えられました」(球界関係者)
広島の即戦力投手と言えば、近年ではクローザーで21年新人王の栗林良吏が思い浮かぶ。その栗林がWBC一次ラウンドで腰の張りを訴えて戻ってきただけに、河野の登板機会も増えそうだ。
「腕の振りはゆっくりなんですが、対戦バッターからすれば、イメージした以上に速いボールが来る感じ。セ・リーグ各球団はてこずると思います」(前出・地元メディア)
クローザータイプではないのかもしれないが、新井監督の「勝利の方程式」に5位ルーキーが入ってくるのは間違いなさそうだ。
(飯山満/スポーツライター)