政府の支援事業「GoToキャンペーン」をさらにお得に利用する匠のワザとして知っておきたいのは、地方公共団体が独自で行っている割引キャンペーンだ。各都道府県が観光支援策を打ち出し、併用もできる(併用は各都道府県の判断に委ねられている)。
例えば、札幌市の支援事業「サッポロ夏割」を利用すれば、1人1泊6000円以上で5000円の割引が可能になり、1000円で宿泊することが可能に。つまり約9割のディスカウントで泊まれることになるのだ。
それどころか、「GoTo」は地方公共団体で割引される前の金額をもとに還元されるので、2100円が還付金として戻ってくる。ホテルに泊まりながら1100円が儲かる計算だ。しかもサッポロ夏割は、3000円のクーポンもプレゼントされるので、まさに至れり尽くせりと言えるだろう。
ただ、お得なキャンペーンに「転売屋が群がっている」と証言するのは、転売事情に詳しいフリーライターの吉岡幸二氏だ。
「地方公共団体のキャンペーンは基本的に先着利用順です。人気エリアであれば配布開始からすぐに完売してしまうことも珍しくありません。7月17日に山口県が額面5000円分を半額の2500円で買える県内宿泊施設『やまぐちプレミアム商品券』を販売したら、数時間で売り切れたんです。それを転売屋も狙っていて、そのあとヤフーオークションで転売されていました」
ヤフオクやフリマアプリのメルカリでは、ディズニーランドなど人気エリアの転売も始まっている。それでも、直前での「東京外し」は転売屋にとっても予想外の出来事だったようだ。
「トラベル事業に合わせて東京のホテルを押さえていたのに、どれも水の泡。高い換金性のあるクオカード付の宿泊プランも、ツイッター上で『錬金術』が紹介されて盛り上がったのですが、それを観光庁の職員が察知したようで、キャンペーン開始2日前に対象外になりました」(吉岡氏)
一方、仲間外れにされた都内は、4連休も観光客はまばらだった様子。「PROSTYLE旅館東京浅草」で、都民限定で宿泊料金50%オフにするなど、都内のホテルで独自サービスが始まったが、都民にとって明るい話題はそれくらい。
そもそも「GoTo」が二転三転したのは、菅義偉官房長官(71)と小池百合子都知事(68)の挑発合戦が原因と言われる。
7月11日に北海道千歳市の講演で菅氏が「圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではない」と、感染再拡大する都の対応を批判。それを受けて小池氏は、政府肝いりのトラベル事業は「冷房と暖房の両方をかけるようなもの」と皮肉を返し、2人の溝は深まるばかり。
菅氏は無視して全国一律で進める予定だったが、小池氏は同調した首長や日本医師会側を味方につけ、「東京外し」の外堀を埋める形になった。
「小池氏が見据えているのは来年の都議選です。都民ファーストを勝たせるため、新型コロナを利用して自民党の印象を悪化させるのが目的。菅氏もそれがわかっているので、舌鋒を強めています。それでも官邸サイドに焦りはありません。東京外しで効果は薄れたものの、小池氏に意見が近い首長以外は、『トラベル事業に感謝している』との声を上げており、むしろ出足好調と捉えています」(政治部デスク)
トバッチリに巻き込まれた都民は感染者増のダブルパンチで、旅行どころではないかもしれないが……。