世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「オリックスの6タテに怒り心頭や」

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 やっぱり、野球を見るのはテレビより、球場のほうがええわ。6月30日、7月1日の中日×阪神(ナゴヤドーム)でラジオの解説を務めました。去年までなら解説者はフリーで入場できたけど、今年はコロナの影響で各報道機関で人数の規制がある。僕も球場で見るのは開幕してから初めて。無観客で声援がないからもの足りない面はあるけど、新鮮さもあった。

 ふだんは鳴り物や歓声にかき消されていた音がよく聞こえてくる。ボールを捉えたバットの音が、芯を食ったとか、先っぽとか、その違いがわかる。守備での選手同士の声の掛け合いや、ベンチの声もよく聞こえてくる。阪急時代にガラガラのスタンドで試合することがあったけど、原風景を感じたな。

 でも、テレビで応援している関西のファンはガッカリしていると思うで。開幕10試合を終えて、阪神が2勝8敗でオリックスが1勝9敗とヨーイドンでつまずいた。両チームともひどいけど、今週はオリックスの話をしたい。今年も春季キャンプで臨時コーチとして手伝いしてきたし、OBの一人としてほんまに情けない。完全に負け癖がついてしまっている。

 最後のリーグ優勝が、まだイチローがいた時の1996年で、12球団でいちばん優勝から遠ざかっている。2000年代に入ってからの20年間は、08年と14年に2位に入った以外はBクラス(4位以下)が18回。少し負けが込むと「やっぱり今年もアカンか」と、チーム全体がマイナス思考になってしまっている。

 前身の阪急の頃は真逆の考え方やった。「俺らはいちばん厳しい練習をしてきたんやから負けるわけがない」と思って戦っていた。パ・リーグで優勝するのは当たり前で、目標は日本シリーズで勝つことやった。

 今のオリックスに「今年こそソフトバンクをやっつけたろう」と本気で思っている選手がいるんやろか。少しでもいるのなら、ロッテとの同一カード6連戦でぶざまな6連敗なんてせんはずやで。「この試合だけは絶対に負けたらアカン」というムードが伝わってこない。いつも同じような感じで試合に臨んで、同じように負ける。1勝9敗のうち、1点差負けが6試合もあった。1球にかける気持ちが強ければ、勝てる試合があったはず。

 エラーや走塁ミスは一生懸命やってても出るけど、大事なのはそのあと。「何が何でも取り返したる」という悔しさが伝わってこない。つまらないミスが出た時は首脳陣だけでなく、選手同士でもどなりつけるぐらいのものがあってもいい。そういうのを経て、チームが一丸となり、戦う集団となっていくんやから。

 西村監督、首脳陣もまだ100試合以上あるんやから、腹をくくって采配してほしい。打線もコロコロ変えすぎ。これでは選手が調子を上げていくのは難しい。肝いりのT-岡田の1番起用も、開幕から6試合でやめてしまった。いいか悪いかは別にして、もう少し我慢したほうがいい。

 レギュラーでない選手はチャンスなんやから、目の色変えてやらなアカン。層の厚いソフトバンクと違って、ちょっと頑張れば試合に出られるようになるんやから。あとは、高い金払って連れてきた新外国人のジョーンズ。練習不足なのか、外野の守備の動きも緩慢に見える。もっと体の切れを出して働いてもらわな、給料泥棒と言われるで。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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